為替操作国とは?為替操作国認定で相場にはどのような影響がでる?為替介入との違いは?

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為替関連のニュースをチェックしていると「アメリカが中国を為替操作国に指定した」等のニュースを見ることがありますよね。

米財務省は5日、中国を「為替操作国」に指定したと発表した。ムニューシン米財務長官は声明で、「この数日で中国は自国通貨を安く誘導する具体的な措置を実施した」と指摘。5日の中国・人民元相場が約11年3カ月ぶり安値となったことを念頭に中国政府の対応を批判した。

産経新聞

2019年8月5日アメリカが中国を為替操作国認定!その時のツイッターの様子まとめ

「為替操作国に指定」とありますが、そもそも「為替操作国」とは何なのか?そして為替操作国に指定されると為替相場にはどのような影響があるのか?

このあたりについて詳しく解説していきます。

為替操作国とは?

為替操作国とは?

為替操作国というのは(アメリカ財務省によって)経常収支を調整したり貿易を優位にする為に為替を不正に操作していると判断された国のことを言います。

基本的には「アメリカ財務省による判断」ですので、アメリカ財務省の為替報告書に基づいて判断されます。

次の3つの条件を満たすと為替操作国として認定され、2つ条件を満たすと監視対象とされます。

  • 対アメリカ貿易黒字額が年間200憶ドル以上
  • 経常黒字額がGDP(国内総生産)比+2%以上
  • 外貨購入額がGDP(国内総生産)比+2%以上、なおかつ1年の内6カ月以上外貨を購入している場合

つまり、為替操作国というのは「アメリカ側からの判断」ということになります。

「為替操作」と「為替介入」の違い
この二つの言葉はほとんど同じ意味と言っていいと思います(やることは同じです)。

ただ「為替操作国」というのはアメリカ側が上記の条件を満たした場合に認定するものであるというだけであり、基本的にはどの国も為替介入は行っています。

アメリカ側からすると、上記の条件を満たしているような国は「不正に操作している国」であり、逆に上記の条件以下の国は「為替介入程度」といったところでしょうか。

なぜ為替操作をするのか?目的は?

為替操作を行う目的は基本的には為替相場の急激な変動を抑え相場を安定化させることです。

しかし、これは客観的な視点ではなく「自分の国にとって都合の良いように安定化させる」という意味合いです。

自分の国にとって都合の良いように為替相場を調整することで「貿易黒字を拡大させる」「経常収支を黒字にする」といったことを主な目的とします。

自国にとって都合の良いように為替相場を調整するので、アメリカ側から都合が悪くなることもあり、不正に為替操作を行ったと認定されることになるのです。

hiro

どっちもどっちだけどね

具体的にどのようなことをして為替を操作するのか?やり方、方法は?

為替相場を操作する本質的な方法は「市場にお金を投入して調整する」ということになります。安ければ大量に買うことで価格が吊り上がりますし、高ければ大量に売ることで価格が下がります。基本的にはこれを国家レベルで行います。

日本の場合は財務省から「外国為替資金特別会計」という資金が為替市場に投入されます。

具体的な為替介入の方法は以下のようなものがあります。

単独介入 一つの国が単独で為替介入する
協調介入 複数の国が協力して為替介入する
覆面介入(隠密介入) 表に公表されることなく秘密裏に為替介入する
口先介入 実際に為替市場に資金を投入することはなく、マーケットを誘導するようなアナウンスだけをする
委託介入 海外の通貨当局等に依頼して介入してもらう
逆委託介入 海外の通貨当局から依頼されて為替介入を行う
不胎化介入 為替介入によって国内の金融政策が影響を受けないように、別の方法で通貨量をコントロールする
非不胎化介入 為替介入によって市場に流した資金をそのまま放置する

このような方法を織り交ぜながら為替相場をコントロールしていきます。

為替介入の効果
これらの方法はどれも短期的な為替操作にしかならず、中長期的に相場をコントロールすることは困難であると言われています。

長期的な為替レートのコントロールには為替介入よりも金融政策が重要です。

為替操作国に指定された実例

為替操作国に指定された実例

アメリカはこれまでにいくつかの国を「為替操作国」及び「為替監視リスト」に認定しています。

これまでに1980年代から1990年代にかけては「台湾」「韓国」、1994年と2019年に「中国」が為替操作国に認定されています。

2019年に中国を為替操作国に認定した際、トランプ大統領は以下のようなツイートをしています。

こちらのツイートを翻訳すると、

「 中国は通貨の価格をほぼ史上最低にまで下げました。 「通貨操作」と呼ばれます。連邦準備制度を聞いていますか?これは、時間の経過とともに中国を大きく弱体化させる重大な違反です! 」

「 中国の歴史的な通貨操作に基づいて、アメリカ人が関税を受け取っていないことは誰にとっても明白です。中国は常に… 通貨操作を使用して、私たちのビジネスや工場を盗み、仕事を傷つけ、労働者の賃金を押し下げ、農民の価格を傷つけました。もう許さない! 」とツイートしています。

この時、確かに米ドル/人民元のチャートは2008年以来となる1ドル7元を突破していました。

米ドル/人民元の月足チャート

この元安の背景として、トランプ大統領が対中輸入3,000億ドルに対して追加関税を行う方針であることを示したことから、中国としては「追加関税分を通貨安で相殺する」ことを狙いとしてあえて人民元安に調整したと言われています。

これに対してトランプ大統領は怒ってツイートしたわけですね。

ちなみに「為替操作国認定」ではないにしろ「監視リスト」には日本も含まれています。

以下アメリカの監視リストに含まれている国です。

監視リスト追加年 監視リスト国
2016年4月 中国、台湾、韓国、日本、ドイツ
2016年10月 スイス
2018年4月 インド
2019年5月 アイルランド、イタリア、ベトナム、シンガポール、マレーシア

これらの国もいつ為替操作国に認定されるかわかりません。

為替操作国に認定されるとどうなる?為替相場への影響は?

為替操作国に認定されるとどうなる?為替相場への影響は?

アメリカに為替操作国として認定されると、アメリカとの二国間協議が行われて、為替介入の透明性を確保することを求められたり通貨の切り上げが行われたりします。

それでも改善がないと判断された場合は制裁関税が行われます。

通貨の切り上げとは?
固定相場制を採用している当該国の中央銀行がドルに対する交換比率を変動させ、自国通貨が強くなるように為替レートを引き上げること

為替相場への影響は?

為替操作国の認定は基本的にアメリカ目線ですので、例えばドル高人民元安になっていた場合は、基本的にはその逆であるドル安人民元高の方向へ動く可能性が高くなるということです。

米ドル/人民元の月足チャート

とにかく「アメリカが適正だと考える為替レート」に引き戻そうとするので、その時々のアメリカの思惑をしっかりと考慮しながら相場の方向性を見ていくことが大切です。

ただし、為替操作国に認定されたからと言って「はいそうですか」と簡単に物事は進みません。

これはあくまでアメリカ側からだけの視点で判断される為、当然それに反発する勢力もありますので、実際に為替相場がどのように動くのかは一概には言えません。

あくまでも世界の基軸通貨を握っている「アメリカはそうゆう思惑である」ということであり、必ずしもアメリカの思惑通りに相場が動くわけではありません。

ですので「為替操作国認定された!よし、じゃあドル安だ!」と簡単に決めつけてしまうのではなく、しっかりとあらゆる情報を複合的に判断するようにしましょう。

hiro

為替介入は基本的にどの国も行っているから、為替操作国と為替介入の線引きは難しいよね

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