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今回は米雇用統計について詳しく解説していきます。
動画でも解説しているので動画もご覧ください。
- 米雇用統計とは?
- アメリカの失業率や就業率などの雇用情勢を調査した統計のことです。
- いつ発表されるの?
- 原則、毎月第1金曜日に発表されます。時間は夏時間の場合は日本時間21時30分、冬時間の場合は日本時間22時30分に発表されます。
- 誰が発表しているの?発表している機関は?
- U.S. BUREAU LABOR STATISTICS(アメリカ労働省労働統計局)が発表しています。
- どこで見れるの?
- U.S. BUREAU LABOR STATISTICS(アメリカ労働省労働統計局)のホームページでレポートを見ることができます。メニュー内にある【ECONOMIC RELEASES】から【Employment & Unemployment】で毎月、四半期、年次の各種データ等を見ることができます。
- なぜ重要なの?なぜ注目されているの?
- 米雇用統計のデータをもとにアメリカの中央銀行であるFRBが金融政策を行うためです。
基本的なセオリーとしては雇用者数が増え失業率が低下していれば金融引き締めの方向に、反対に雇用者数が減り失業率が上昇していれば金融緩和の方向に金融政策が行われます。
そしてこの金融政策の方向性によってマーケットの動きも大きく左右されるため、投資家や市場参加者から注目されています。
- 調査対象は?
- 家計調査に関しては約60,000世帯が対象となり、事業所調査に関しては約122,000の事業所と政府機関、約666,000の個々の勤務場所が対象となります。
米雇用統計は以下のような様々な項目に対して調査が行われます。
家計調査(テーブルA) | 事業所調査(テーブルB) |
---|---|
・雇用状況 ・失業率 ・失業の理由 ・失業期間 ・アルバイトをしている人 ・非労働力者 | ・産業別の雇用(非農業部門雇用者数など) ・女性従業員の割合 ・非管理職従業員の割合 ・時間と収入(平均時給、労働時間など) ・拡散指数(雇用の増減のバランス) |
調査方法は主に「家計調査」と「事業所調査」があります。
家計調査は約60,000世帯を対象に雇用状況や失業状況などについて調査され、テーブルAに表示されます。
事業所調査は約122,000の企業と政府機関を対象に産業別雇用者数や平均時給などについて調査され、テーブルBに表示されます。
この中でも特に注目するべき項目が「非農業部門雇用者数」「失業率」「平均時給」の3つです。
基本的にはこの3つの指標を押さえておけばOKです。
非農業部門雇用者数とはその名の通り、農業部門を除いた産業で雇用されている人の数です。
なので、自営業者、経営者、農業従事者は含みません。
英語でNon Farm Payrollsといい、この頭文字をとってNFPと呼ばれたりします。
この項目を見ることによってアメリカ全体の雇用者数の推移を確認することができます。
失業率とは労働力人口に対する失業者の占める割合のことです。計算方法としては、労働市場で仕事を探している人(失業者)の数を、労働力人口(労働者と失業者の総数)で割り、パーセントで表したものが失業率となります。
非農業部門における主要な産業の1時間当たりの平均賃金のことです。
平均時給が増加すると、消費者の購買力の向上が期待される一方で、企業側は人件費のコスト増加による物価上昇圧力となります。
例えば、以下のように発表されたとします。
非農業部門雇用者数 | 失業率 | 平均時給(前年比) |
---|---|---|
23.6万人 | 3.5% | 4.2% |
この場合、非農業部門雇用者数は「先月から23.6万人増えた」ということになります。
大体毎月10万人~20万人程度の増加が安定した雇用の伸びとされています。
失業率は4~5%以下で完全雇用状態となっている可能性が高いです。(完全雇用とは働く意思のある人がほぼ全て働けている状態のこと)
また、平均時給が4.2%というのは前年の同じ月に比べて4.2%増えているということになります。
平均時給に関しては、前年比だけでなく前月比も重要視されるので、数値が前年比なのか前月比なのかをしっかり確認するようにしましょう。
このように基本的には「先月(もしくは前年)と比べてどの程度変化しているか」という見方をすることが多く、その変化の度合いによってアメリカの経済状況を把握していきます。
米雇用統計発表時の為替相場は上記チャートのように大きく動くことが多い為、注意が必要です。
非農業部門雇用者数の増加や失業率が低下した場合 | 非農業部門雇用者数の低下や失業率が増加した場合 |
---|---|
アメリカ経済は好調と判断でき、FRBの利上げ期待からドル需要の増加となる | アメリカ経済は不調と判断でき、FRBの利下げ期待からドル需要の低下となる |
基本セオリーとしては、米雇用統計の結果が良い場合(非農業部門雇用者数の増加、失業率の低下、平均時給の増加)はアメリカ経済は好調である為、FRBの利上げ期待からドルが買われやすくなります。
反対に、米雇用統計の結果が悪い場合(非農業部門雇用者数の減少、失業率の増加、平均時給の低下)はアメリカ経済は不調である為、FRBの利下げ期待からドルが売られやすくなります。
これがセオリーとなる相場の動きです。
しかし、実際の為替相場の値動きはセオリー通りには動きません。
なぜなら、アメリカ経済が好調であるか不調であるかは「事前にある程度織り込まれているから」です。
米雇用統計はあくまで1カ月前のデータが発表される遅行指標です。
その為、米雇用統計が発表されなくても、ほとんどの人は何となく景気が良いのか悪いのかは既に把握しています。
なので、米雇用統計のデータは発表前からある程度「予想」されます。この「予想値」に基づいて為替相場は事前に値動きを織り込んでいるのです。
そこで米雇用統計発表時に相場にインパクトを与えるのが「予想値と実際の結果の乖離」です。
市場がある程度事前に織り込んでいた予想値に対して、実際の結果が乖離した場合、相場は大きく動くことになります。
例えば、上記のように非農業部門雇用者数において事前予想が20万人に対して、結果が30万人だった場合はサプライズとなり、予想よりもアメリカ経済は好調であることから、更なる金利上昇期待によってドルが買われるということになります。
反対に、結果が10万人と予想よりも少なかった場合もサプライズとなり、予想よりもアメリカ経済は不調であることから、更なる金利下落期待によってドルが売られるということになります。
このように事前予想と結果に乖離があればあるほどサプライズとなり、相場は大きく動きます。
また事前予想通り、もしくはあまり予想と乖離の無い結果だった場合は相場へのインパクトはそれほどなく、あまり大きな動きはありません。
つまり為替相場がどのように動くのかは、結局のところ「事前予想に対してどの程度乖離があったのか」によって上にも下にも動くということです。
全て英語なので、ブラウザの自動翻訳などを使うのも有効です。
ちなみに、横にある【PDF】をクリックするとPDFでまとめられたレポートを見ることができ、【Charts】をクリックすると各データのチャートを見ることができます。
【Employment Situation Summary】で雇用状況の概要を確認できます。
また、【Employment Situation Summary Table A. Household data, seasonally adjusted】でテーブルA(家計調査)の詳細を、【Employment Situation Summary Table B. Establishment data, seasonally adjusted】でテーブルB(事業所調査)の詳細を確認できます。
こちらはあくまで一次情報を確認する方法ですが、速報を日本語で確認したい場合などは日本の各種FX会社などが取引ツールのニュースやホームページ、もしくはTwitterなどのSNSで随時更新しています。
「Employment Situation Summary Table A. Household data, seasonally adjusted」から家計調査の詳細を確認することができます。
特に重要となる項目はUnemployment ratesの「Total, 16 years and over」です。これが16歳以上の全体の失業率を表します。
あとは、Participation rate(労働参加率)なども注目しておくといいと思います。
「Employment Situation Summary Table B. Establishment data, seasonally adjusted」から事業所調査の詳細を確認することができます。
特に重要なのは「Total nonfarm」で、この項目が「非農業部門雇用者数」の結果となります。
また、「Average hourly earnings」が「平均時給」となります。こちらも重要指標となります。
過去のデータを見たい方はレポートをひとつずつ遡っていくのではなく、チャートを見ることをおすすめします。
チャートを見ることで視覚的に過去の指標の推移がわかります。
例えば、過去の失業率を知りたい場合は、このように失業率のチャートを確認することで過去の数値やこれまでの推移を簡単に確認することができます。
このようなチャートを見たい場合は上記の一次情報で紹介した【Charts】から見ることができます。(もしくはメニュー内にある【DATA TOOLS】からも見れます)
2023年の米雇用統計の発表スケジュールは以下の通りです。
発表日 | 非農業部門雇用者数 | 失業率 | 平均時給(前年比) |
---|---|---|---|
2023年01月06日 | 41.4万人 | 3.5% | 31.83ドル(4.8%) |
2023年02月03日 | 47.2万人 | 3.4% | 33.02ドル(4.4%) |
2023年03月10日 | 32.6万人 | 3.6% | 33.09ドル(4.6%) |
2023年04月07日 | 23.6万人 | 3.5% | 33.18ドル(4.2%) |
2023年05月05日 | |||
2023年06月02日 | |||
2023年07月07日 | |||
2023年08月04日 | |||
2023年09月01日 | |||
2023年10月06日 | |||
2023年11月03日 | |||
2023年12月08日 |
ホームページで確認したい場合はメニューの【ECONOMIC RELEASES】から【Schedules for news Releases】から今後のスケジュールを確認することができます。
基本的には上記で説明した通り「非農業部門雇用者数」「失業率」「平均時給」の数値を確認しておけばほぼ問題ありません。
しかし米雇用統計の膨大なデータから、更に細かい部分を読み取ることでアメリカ経済の実態をより深く知ることができます。
失業率と併せて発表される「労働参加率(Participation rate)」に注目することで、より深く失業率の実態を知ることできます。労働参加率のデータはテーブルA(家計調査)から確認できます。
労働参加率とは働く意思のある人のことで、この数値が減っている場合は、職探しを諦めてしまった人が増えた可能性があります。
つまり失業率が低下していても、労働参加率が低下している場合は「職探しをしている人の絶対数が減ったことで失業率が低下した可能性がある」ということになります。
この場合、失業率が低下したとはいえ、実体はそれほど変化していない可能性があるということです。
非農業部門雇用者数の中でも特にどの業種の増減が大きいのかを把握することで、より深く雇用者数のデータを読み取ることができます。
業種別雇用のデータはテーブルB(事業所調査)から確認できます。
例えば、ある特定の業種だけが異常に増減している場合などは、その業種固有の原因である可能性があります。
そうなると、一過性の動きになる可能性もありますし、反対にそこから他の業種まで派生する可能性もあります。
これはその原因が何であるかによって変わってくる部分ではありますが、いずれにせよ、業種別雇用者数の数値を確認することで更に先行して雇用者数の流れを読み取ることができます。
米雇用統計は投資家や企業、個人トレーダーなどにとって市場の動向を把握する上で非常に重要な経済指標となります。
市場の状況によっては、発表時に急激な為替相場の変動を引き起こすことがあるので、正しくデータを読み取れるようにして、準備をしておくことが大切です。
このページでは米雇用統計について網羅的に解説していますので、ここに書いてあるようなことを把握できていればひとまず十分なレベルだと思います。是非繰り返し読んで理解を深めてください。