FXのフラッシュクラッシュとは?過去の実例から見る原因と対策方法

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為替相場の世界には「フラッシュクラッシュ」というものがあります。
今回はフラッシュクラッシュについて詳しく解説していきます。

フラッシュクラッシュの基礎知識

フラッシュクラッシュの基礎知識

フラッシュクラッシュとは?

フラッシュクラッシュとは相場が瞬間的に急落することを意味します。「瞬間的急落」「瞬間暴落」などと言われることもあります。

数秒から数分の間に大きく下落することから、スプレッドが大きく開き、逆指値注文なども間に合わないような状態になることがあります。

フラッシュクラッシュが起こる原因

フラッシュクラッシュは以下の2つの要因が重なることで起こりやすくなります。

  • 流動性が低い(取引高が少ない)
  • 需給のバランスが極端に崩れる

瞬間的に急落するということは、需給のバランスが大きく崩れている状態で、極端に売り(もしくは買い)が集まっているということです。

そしてこのような瞬間的な需給のバランスが崩れる一番の要因が、ファンドなどが利用する超高速、高頻度で自動売買を繰り返す「HFT」のアルゴリズム取引によるものです。

このHFTが大きな注文に過剰反応を示し、1秒間に数千~数万の売り注文を繰り返して出すことによって、一瞬にして大きく需給バランスが崩れることがあります。

特に、相場の流動性が低い時にHFTが過剰反応を示すと、需給のバランスが崩れやすく、フラッシュクラッシュが起こりやすくなるのです。

HFTとは?

HFT(High Frequency Trading)は1秒間に数千~数万という数の取引をコンピューターによって自動で行うシステムのことです。

1秒間に数千~数万回ですので、人間が行うスキャルピングの比ではありません。

仕組みとしては大きな注文に反応して、瞬時に同じ方向へ自動的に注文がだされるようになっています。

ですので、大きな買い注文(もしくは売り注文)がHFTによる大量の買い(もしくは売り)を呼び込み、結果的に過剰な暴騰や暴落を引き起こすのです。

人間にはまず不可能な速さで相場の動きに瞬時に反応し、莫大な数の売買を繰り返していきます。

金融市場の取引高のうち50%~60%以上はHFTによるものとなっており、その影響力は非常に大きなものとなっています。さらに詳しくは『HFTとは?HFTが市場に与える影響と問題点』の記事もご覧ください。

これに加えて多くのトレーダー達が急激なボラティリティからリスクオフする(トレードをしなくなる)ことで一時的に相場の流動性が大きく低下し、需給のバランスが大きく崩れるのも要因の一つです。

フラッシュクラッシュが起こりやすい時間帯

フラッシュクラッシュは、基本的に「流動性が低い状態」の時に起こりやすいです。
その為、1日の中でも特に取引高が少ない時間帯の方がフラッシュクラッシュが起こりやすいと言えます。

ドル円の時間帯別取引高

ドル円相場で言うと、日本時間の午前5時~午前7時、午前11時~午後13時あたりは取引高が少なく、流動性が低くなりやすい時間帯です。
つまり、この時間帯はフラッシュクラッシュが起こりやすい時間帯と言えます。

フラッシュクラッシュが起こりやすい通貨ペア

フラッシュクラッシュは流動性が低い状態の方が起こりやすい為、基本的には取引高の多いメジャー通貨よりも、取引高の少ないマイナー通貨の方が起こる可能性が高いと言えます。

メジャー通貨よりもマイナー通貨の方が取引高は少なく常に流動性が低いので、ロスカット狙いで意図的にフラッシュクラッシュが引き起こされる可能性が高いのです。

2019年8月26日のトルコリラ円の15分足チャート

こちらはトルコリラのフラッシュクラッシュの実例です。トルコリラなども取引高はそれほど多くないので、フラッシュクラッシュは起きやすいと言えます。この時は数分間の間に一気に140pips以上急落しました。

2019年8月26日トルコリラ円のフラッシュクラッシュ時のツイッターの様子まとめ

ドル円相場における過去のフラッシュクラッシュ実例チャート

ドル円相場における過去のフラッシュクラッシュの実例を紹介していきます。

2020年3月9日

2020年3月9日の米ドル円日足チャート

2020年3月9日はコロナウイルスの影響によって原油相場が大きく下落し、ドル円相場もリスク回避の動きを見せました。
週末をはさんだ影響もあり、大きく窓をあけてドル売りが先行したことで、1ドル105円台から101円台へ400pips以上の急落となりました。

2019年1月3日

2019年1月3日の米ドル/円の5分足チャート

2019年1月3日の早朝、円相場を中心とした瞬間的な急落がありました。
なんとわずか5分の間に108円台後半から、103円台まで瞬間的に急落しました。およそ500pipsの急落です。
この時は多くのトレーダー達が強制ロスカットされる事態になりました。この時の様子は以下の記事でもまとめております。

500pips以上の記録的円高でロスカットの嵐!悲痛なツイートまとめ 2019年1月3日の為替相場大暴落時の5ちゃんねるの様子

2015年8月24日

2015年8月米ドル/円の日足チャート

2015年8月24日、米ドル/円の瞬間的な急落がありました。この時は121円台後半から116円台前半まで瞬間的に急落し、多くのロングポジションが刈られてロスカットの嵐となりました。

2010年5月6日

2010年5月米ドル/円の日足チャート

2010年5月6日、米ドル/円の瞬間的な急落がありました。この時は93円台から88円台まで瞬間的に急落しました。やはりこの時も多くのロングポジションが狙われました。

フラッシュクラッシュを引き起こした犯人が逮捕された事例

フラッシュクラッシュを引き起こした犯人が逮捕された事例

過去にはフラッシュクラッシュを意図的に引き起こして多額の利益を得たトレーダーが逮捕される事件もありました。
例えば、2010年5月6日のフラッシュクラッシュはイギリスの先物トレーダーSarao容疑者が引き起こしたとされ、実際に逮捕までされています。

以下はその時のBloombergの記事です。

「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれる2010年の世界的な株式相場急落をあおる不正取引を行ったとして英国で逮捕されたトレーダーのナビンダー・シン・サラオ容疑者がロンドンの裁判 所に22日出廷し、500万ポンド(約9億円)での保釈を認められた。同容疑者は、訴追請求されている米国への身柄引き渡しに抵抗している。

米当局によると、サラオ容疑者は米株式市場の時価総額が数分間で1兆ドル(約120兆円)近く減少した2010年5月6日に、S&P500種株 価指数先物取引で90万ドル近くを稼いだほか、10年から14年にかけて先物売買で計4000万ドルを得たという。

引用元:Bloomberg

サラオ容疑者は何千ものなりすまし注文を瞬間的に出し入れする、いわゆる「レイヤリング」と「スプーフィング」を行って、意図的にフラッシュクラッシュを起こしていたようです。

スプーフィングは「見せ玉」とも呼ばれ、大量の注文を出したと見せかけて、その注文が約定しそうになったらキャンセルをすることで、他の注文を誘発する方法のことです。これに大口投資家や銀行等が反応し、大量の注文がでることで、その大量の注文にHFTも過剰反応を引き起こし、結果フラッシュクラッシュが起こります。

大きな売り注文が入り、本来の市場価格よりも相当割安なところまで相場が下落するので、そこを拾って買い集め、最終的には元の水準に戻ったところで全て利確をします。

これによって約4年で4,000万ドル以上を稼いだとされます。

フラッシュクラッシュの対策方法

フラッシュクラッシュの対策方法

いつ起こるかわからないフラッシュクラッシュですが、ある程度の対策は可能です。
フラッシュクラッシュで強制ロスカットをくらわない為にも、ここではできうる限りの対策方法を紹介します。

流動性の低い時のポジションに注意する

2019年1月3日に起きたドル円のフラッシュクラッシュもそうですが、お正月休みの薄商いの非常に流動性が低い時に起こりました。
上記でも説明した通り、基本的にフラッシュクラッシュは「相場の流動性が低い状態」で起こりやすくなります。

つまり、流動性が低くなる時期、時間帯をできるだけ回避してトレードをしていくことで、フラッシュクラッシュに巻き込まれるリスクを下げることができるということです。

  • 年末年始
  • ゴールデンウィーク
  • 夏のバケーション時期
  • その他長期休暇
  • 日本時間早朝、お昼頃

具体的には、上記のような薄商い時はポジションを手仕舞うなどの対策をしておけばある程度のリスクを限定することが可能です。

証拠金維持率に余裕を持つ

上記で紹介した実例を確認して頂ければわかると思いますが、フラッシュクラッシュの特徴として「瞬間的に急落し、すぐにある程度の水準まで戻ってくる」ということがあげられます。
実例では全て下に長い髭が確認できます。これは瞬間的に急落したあと、すぐにある程度の水準まで価格を戻したことを意味します。

つまり、フラッシュクラッシュというのは急落の後に高確率で高騰がくるということです。
ということは、強制ロスカットさえされなければ損失を出さずに元の水準まで戻ってくる可能性が高いわけです。

となると、強制ロスカットがされないように証拠金維持率に大きな余裕をもたしておけばこういったフラッシュクラッシュ時でも損失を被らずに済む可能性があるのです。

できるだけ証拠金維持率に余裕を持たせてポジションを持っておくことで、フラッシュクラッシュへのリスクヘッジにもなります。

逆指値注文(ストップロス)を入れておく

基本と言えば基本ですが、逆指値注文(ストップロス注文)を入れておいて損失を限定させることもリスクヘッジとなります。

ただし、フラッシュクラッシュは瞬間的な急落ですので、使用しているFX会社によっては注文が間に合わず、自分が指定していた価格よりも大幅に不利な価格で約定させられる可能性もあるどころか、一時的に注文自体を受け付けなくなるFX会社もあります。

なので、フラッシュクラッシュ時においては、基本的には逆指値注文は引っかからない可能性が高いということを理解したうえで、あくまでも希望通りの価格で引っ掛かればラッキー程度に考えておきましょう。やらないよりはマシといった感じでしょうか。

フラッシュクラッシュに強いFX会社を使う

トレードをするFX会社選びも非常に重要です。

FX会社によってスプレッドの開き方も違いますし、価格も違いますし、約定力も違ってきます。
中には致命傷になるレベルでスプレッドが広がるようなFX会社もありますし、ひどい場合だと数分間も取引自体ができなくなるところもあります。

できるだけそういったFX会社を使わないようにしていくことも大切なリスクヘッジの一つです。
以下の記事で暴落時に強いFX会社を比較しておりますので、是非参考にしてみて下さい。

相場の暴落・暴騰時におけるFX業者別スプレッドの開き方を比較してみた

フラッシュクラッシュを利用して稼ぐ方法

フラッシュクラッシュを利用して稼ぐ方法

戻しを狙う

フラッシュクラッシュは一時的に需給のバランスが大幅に崩れることで「行き過ぎた急落」となり、高い確率でその後は買い戻しが入ることで「急騰」が起こります。
これは過去の実例を見て頂ければ一目瞭然ですが、過去のフラッシュクラッシュは高確率で下髭をつけてある程度の水準まで戻しています。

2019年1月3日の米ドル/円の5分足チャート

つまり、もしリアルタイムでフラッシュクラッシュに遭遇した場合、大きく急落してからの「戻し」を狙うのは非常に有効な手法と言えます。

できるだけ細かい時間足でチャートを見ながら、反発する動きを見極めてエントリーしていくようにすれば稼げる可能性は高いです。

注意点としては、フラッシュクラッシュ時は恐らくほとんどのFX会社でスプレッドが大きく開いている為、スキャルピングなど数秒で細かく売買をしていくのは難しいと思われます。
なので、ある程度(数分)の時間ポジションをもって利益を出していく方が効率的です。

両建てを行うとどうなる?

禁止をしているFX会社が多いので推奨はしませんが、異なるFX会社で両建てをすることでも利益は出せます。
例えば「A社で買い」「B社で売り」を行った場合、A社の買いポジションは強制ロスカットされますが、B社の売りポジションは大きく利益が出る可能性があります。
この差額で利益の方が大きくなる可能性が高いので、フラッシュクラッシュが起こりそうな時期に両建てをしておくのも一つの手法と言えるかもしれません。

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