為替相場の世界には「フラッシュクラッシュ」というものがあります。
今回はフラッシュクラッシュの意味や実際に起こった過去の実例なども交えながら原因や対策法などを解説していきます。
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フラッシュクラッシュの意味とは?
フラッシュクラッシュとは相場が瞬間的に急落することを意味します。
「瞬間的急落」「瞬間暴落」などと言われることもあります。
過去の実例①「2019年8月26日トルコリラ/円」
2019年8月26日の早朝にトルコリラ円のフラッシュクラッシュが起こりました。

この時は数分間の間に一気に140pips以上急落しました。

過去の実例②「2019年1月3日米ドル/円」
2019年1月3日の早朝、円相場を中心とした瞬間的な急落がありました。
以下のチャートはその時の米ドル/円の5分足チャートです。

なんとわずか5分の間に108円台後半から、103円台まで瞬間的に急落しました。およそ500pipsの急落です。
この時は多くのトレーダー達が強制ロスカットされる事態になりました。この時の様子は以下の記事でもまとめております。


過去の実例③「2015年8月24日米ドル/円」
2015年8月24日、米ドル/円の瞬間的な急落がありました。

この時は121円台後半から116円台前半まで瞬間的に急落し、多くのロングポジションが刈られてロスカットの嵐となりました。
過去の実例④「2010年5月6日米ドル/円」
2010年5月6日、米ドル/円の瞬間的な急落がありました。

この時は93円台から88円台まで瞬間的に急落しました。やはりこの時も多くのロングポジションが狙われました。

フラッシュクラッシュが起こる原因
フラッシュクラッシュは基本的には様々な要因が重なって起こりますが、特にHFT(High Frequency Trading)と呼ばれるコンピューターのプログラムで超高速、高頻度の売買を行うアルゴリズムと、自動的に売買を行うシステムトレードによる影響が大きいです。
HFTは主にヘッジファンドや機関投資家の間で使用されていて、相場の流動性が低い時に大きな注文等が入ると過剰な反応を示し、フラッシュクラッシュを起こす原因となります。
HFTは1秒間に数千~数万という数の取引をコンピューターによって自動で行うシステムのことです。
1秒間に数千~数万回ですので、人間が行うスキャルピングの比ではありません。
仕組みとしては大きな注文に反応して、瞬時に同じ方向へ自動的に注文がだされるようになっています。
ですので、大きな買い注文(もしくは売り注文)がHFTによる大量の買い(もしくは売り)を呼び込み、結果的に過剰な暴騰や暴落を引き起こすのです。
人間にはまず不可能な速さで相場の動きに瞬時に反応し、莫大な数の売買を繰り返していきます。
金融市場の取引高のうち50%~60%以上はHFTによるものとなっており、その影響力は非常に大きなものとなっています。

これに加えて多くのトレーダー達が急激なボラティリティからリスクオフする(トレードをしなくなる)ことで一時的に相場の流動性が大きく低下することも要因の一つです。
また意図的にフラッシュクラッシュを起こすことも可能で、例えば2010年5月6日のフラッシュクラッシュはイギリスの先物トレーダーSarao容疑者が引き起こしたとされ、実際に逮捕までされています。
Sarao容疑者は何千ものなりすまし注文を瞬間的に出し入れすることで大きな売り注文が入るようなプログラムを使用していました。
大きな売り注文が入り価格が下落していくところを全て拾って買っていき、最終的には元の水準まで戻るので、買った分が全て利益になります。
これが一時的なフラッシュクラッシュの原因で、この時Sarao容疑者は879,018ドルの利益を上げたとされています。
フラッシュクラッシュはマイナー通貨で起こりやすい
あえて米ドル/円でのフラッシュクラッシュの実例を紹介してきましたが、基本的には米ドルなどのメジャー通貨よりもマイナー通貨の方がフラッシュクラッシュは起こりやすいです。
というのもフラッシュクラッシュの特徴として「流動性が低い時に起こりやすい」ということがあげられるからです。
メジャー通貨よりもマイナー通貨の方が取引高は少なく常に流動性が低いので、ロスカット狙いで意図的にフラッシュクラッシュが引き起こされる可能性が高いのです。

フラッシュクラッシュの対策方法
いつ起こるかわからないフラッシュクラッシュですが、ある程度の対策は可能です。
フラッシュクラッシュで強制ロスカットをくらわない為にも、ここではできうる限りの対策方法を紹介します。
流動性の低い時のポジションに注意する
2019年1月3日に起きたフラッシュクラッシュもそうですが、お正月休みの薄商いの非常に流動性が低い時に起こりました。
基本的にフラッシュクラッシュが起こりやすい条件として「相場の流動性が低い状態」ということがあげられます。
つまり、流動性が低くなる状態をできるだけ回避していくことが重要な対処法となります。
その為には、普段からできるだけ流動性の高い通貨ペアでの取引をするようにしたり、年末年始や夏のバケーション時期などの薄商い時はポジションを手仕舞うなどの対策をしておけばある程度のリスクを限定することが可能です。
流動性の高い通貨ペアというのは、つまり取引高の多い通貨ペアということです。このあたり更に詳しく知りたい方は『トレードの勝率が上がる通貨ペアの選び方』も参考にしてみて下さい。
証拠金維持率に余裕を持つ
上記で紹介した実例を確認して頂ければわかると思いますが、フラッシュクラッシュの特徴として「瞬間的に急落しすぐにある程度の水準まで戻ってくる」ということがあげられます。
実例では全て下に長い髭が確認できますよね。これは瞬間的に急落したあと、すぐにある程度の水準まで価格を戻したことを意味します。
つまり、強制ロスカットさえされなければある程度損失を減らすことができる可能性が高いわけです。
となると、強制ロスカットがされないように証拠金維持率に大きな余裕をもたしておけばこういったフラッシュクラッシュ時でも損失を減らすことができます。
ハイレバレッジでポジションを持つのではなく、余裕をもった資金管理が大切です。
ストップ注文を入れておく
基本と言えば基本ですが、ストップ注文を入れておいて損失を限定させることも大切です。
ただし、フラッシュクラッシュは瞬間的な急落ですので、使用しているFX会社によっては注文が間に合わず、自分が指定していた価格よりも大幅に不利な価格で約定させられる可能性もあります。
実際、フラッシュクラッシュ時はそもそも一時的に注文自体を受け付けなくなるFX会社もあります。
フラッシュクラッシュ時においてはストップ注文はあくまでも希望通りの価格で引っ掛かればラッキー程度に考えておきましょう。
フラッシュクラッシュに強いFX会社を使う
トレードをするFX会社選びも非常に重要です。
FX会社によってスプレッドの開き方も違いますし、価格も違いますし、約定力も違ってきます。
中には致命傷になるレベルでスプレッドが広がるようなFX会社もありますし、ひどい場合だと数分間も取引自体ができなくなるところもあります。
できるだけそういったFX会社を使わないようにしていくことも大切なリスクヘッジの一つです。
また、以下の記事で暴落時に強いFX会社を比較しておりますので、是非参考にしてみて下さい。
