FXの損失繰越を忘れたら?期限後申告で取り戻せる範囲と更正の請求

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こんな疑問を持つ方へ
  • FXの損失を確定申告するのを忘れた。もう繰り越せない?
  • 期限後申告や更正の請求で、あとから取り戻せる?
  • 途中の年に申告しなかったら、どうなる?
  • 今から何をすればいい?誰に相談すればいい?

FXの損失繰越を忘れても、その次の年分の確定申告をまだ出していなければ、取り戻せる可能性があります。損失の年の申告をしていないなら期限後申告を古い年から順に出し、申告はしたが損失を書き忘れたなら更正の請求で直します。反対に、次の年分の申告を先に出してしまった後だと、繰越が認められないことが多くなります。この記事では、国税庁の通達と、FXの損失をめぐる裁判の判決をもとに、取り戻せる範囲を整理します。

FXの損失繰越を忘れたら?ケース別の早見表

忘れたこと気づいたとき取り戻せる?方法
損失の年に申告していないその後の年も申告していない可能性あり損失の年から順に期限後申告
損失の年に申告していない次の年分の申告を先に出した難しい税務署に相談
申告したが損失(付表)を書き忘れた次の年分の申告の前可能性あり損失の年の更正の請求
申告したが損失(付表)を書き忘れた次の年分の申告の後難しい税務署に相談
付表はつけたが損失額が少なかったいつでも(5年以内)可能性あり更正の請求で増やした額で繰越
途中の年に申告しなかった後の年分を先に出した難しい途切れた年以降は使えない

※国税庁の法令解釈通達(措置法41の15-1・41の15-2)、東京高裁平成30年3月8日判決(国税庁「税務訴訟資料」第268号-24)、税理士の解説をもとに整理。個別の判断は税務署か税理士に確認を

FXの損失を繰り越す条件は、損失の年に付表をつけて確定申告をし、その後も毎年続けて付表つきで申告することです。国税庁のタックスアンサーNo.1523に、この手続きが書かれています。忘れたときに取り戻せるかは、この「毎年続けて」の順番が崩れていないかで決まります。

ポイントは、繰越を使いたい年の申告を出す時点で、それより前の年の申告がすべてそろっているかです。前の年の申告が抜けたまま後の年の申告を出すと、あとから前の年を出しても順番は戻せません。

損失の年に申告していなかった:期限後申告で取り戻せる?

内容
できること損失が出た年の確定申告を、期限を過ぎてから出す(期限後申告)
順番損失の年→次の年→その次の年と、古い年から順に出す
損失の年のペナルティ納める税金がないので、無申告加算税や延滞税はかからない
利益の年のペナルティ繰越で引ききれない利益があれば、税金に加えて無申告加算税や延滞税がかかることがある
いつまで目安は申告期限から5年。ただし繰越は損失の翌年から3年間

※国税通則法・東京高裁平成30年3月8日判決(確定損失申告の期限後申告が認められることにも触れている)ほか

損失が出た年に確定申告をしていなくても、その後の年も申告していないなら、まだ間に合う可能性があります。損失の年の申告書を期限後申告として出し、続けて次の年分も付表をつけて出せば、毎年続けて申告した形になるからです。

損失の年は納める税金がないため、遅れて出しても無申告加算税はかかりません。ただし、次の年に繰越で引ききれない利益があったのに申告していなかった場合は、その年の分の税金と加算税・延滞税を納めることになります。延滞税の割合や計算はFXの税金は申告しないとバレる?で試算しています。

申告で書き忘れた:更正の請求で直せるのは翌年分の申告まで

ケース国税庁の通達の考え方
付表をつけずに申告した(損失を書いていない)更正の請求に基づく更正で新たに損失があることになった場合も、損失の年に付表つきで申告したものに含める(措置法通達41の15-1)
付表はつけたが、損失額が少なかった更正で直した後の金額を基に繰越を計算する(同41の15-2)

※国税庁「法令解釈通達 第41条の15(先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除)関係」より要約

損失の年に確定申告はしたものの、FXの損失を入れていなかった場合は、その年分の「更正の請求」で損失を追加できます。国税庁の通達は、更正の請求によって後から損失があることになった場合も、繰越の条件を満たすと扱っています。更正の請求は、申告期限から5年以内に出せます。

ただし、更正の請求が間に合うのは、ふつう次の年分の確定申告を出す前までです。次の年分の申告書を付表なしで出してしまうと、その時点で毎年続けて付表つきで申告するという条件が崩れます。税理士の解説では、次の年分の申告後に前の年の更正の請求をして、繰越が認められなかった裁決例も紹介されています。

途中の年の申告を飛ばした:裁判で認められなかった例

図1 裁判で繰越が認められなかった例(東京高裁 平成30年3月8日判決) FXの損失を繰り越そうとしたが、申告の順番が逆になったため認められなかった 2011年 FXで損失 損失の年分は 申告した → 2012年 申告を していなかった (期限内に出さず) → 2013年 先に2013年分を 確定申告 (繰越なし) → あとから 2012年分を期限後に 出し、2013年分の 更正を請求→認めず

図: 国税庁「税務訴訟資料」第268号-24(東京高裁 平成30年3月8日判決・確定、第一審は長野地裁 平成29年9月29日判決)をもとに作成

この裁判の納税者は、FXなどで2011年に出た損失を、2013年分の利益から差し引こうとしました。しかし2012年分の確定申告を出さないまま、先に2013年分を申告していました。あとから2012年分を期限後申告し、2013年分の更正の請求をしましたが、税務署は認めず、裁判でも退けられました。

判決は、繰越を受ける年分の確定申告書を出すまでに、毎年続けて申告する条件が満たされている必要があると述べています。損失の年や途中の年の期限後申告が認められることも、この判断を変えるものではないとしました。後から順番をそろえても救われない、という点に注意が必要です。

今から何をする?損失繰越を忘れたときの手順

図2 損失繰越を忘れたと気づいたときの確認リスト 上から順に確かめる。迷ったら申告書の控えを持って税務署へ □ 損失が出た年はいつか その年の翌年から3年間が繰越の期間。もう過ぎていないか □ 損失の年に確定申告を出したか 出していない→期限後申告を検討。出した→付表をつけたかを確認 □ その次の年分の申告を出したか まだ→更正の請求か期限後申告が間に合う可能性。出した→難しいことが多い □ 毎年、付表をつけて申告したか 1年でも抜けていると、そこで途切れる □ 業者の年間取引報告書があるか 過去の年の分は、会員ページか業者への依頼で再発行

まず、損失が出た年と、その後に出した申告書を確認します。申告書の控えやe-Taxの送信記録があれば、付表をつけていたかが分かります。過去の年の年間取引報告書は、FX会社の会員ページや問い合わせで再発行してもらえます。

期限後申告も更正の請求も、国税庁の確定申告書等作成コーナーで書類を作れます(対応している年分はサイトで確認を)。ケースによって結論が変わるので、迷ったら申告書の控えと取引報告書を持って税務署に相談するか、税理士に依頼しましょう。期限後申告は、税務署から指摘される前に自分で出すほうが加算税が軽くなります。

期限後申告・更正の請求で出す書類

手続き主な書類
損失の年の期限後申告確定申告書、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書、申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
その後の年の申告確定申告書、計算明細書、付表(損失がなくなるまで毎年)
更正の請求更正の請求書、計算明細書と付表(請求額の計算の根拠として)、本人確認書類
共通で手元に用意各年の年間取引報告書、前に出した申告書の控え

※国税庁タックスアンサーNo.1523、国税庁「更正の請求書」の記載案内などをもとに整理。作成コーナーで作ると付表と明細書は入力内容から自動で作られる

期限後申告書は、ふつうの確定申告書と同じ様式です。作成コーナーで過去の年分を選んで作り、e-Taxで送るか、印刷して税務署に出します。どの年分から出すかの順番だけは、必ず古い年からにしてください。

あわせて読みたい:FXの税金対策は?経費・損失の繰越・ふるさと納税の上限を給与別に試算

【データ】「申告したが適用できなかった」人は約1割

図3 FXの損失の繰越控除を知っているか・使ったか 金融先物取引業協会「FXに関する実態調査」(2018年・FX経験者1,000人) 確定申告して適用できたことがある 32.7% 知っていたが、利益だったので対象外 22.5% 控除できると知っていたが申告しなかった 13.9% 控除を知らず、したこともない 13.9% 確定申告したが適用できなかった 9.6% 知らなかったが、対象にならなかった 7.4%

図: 金融先物取引業協会「FXに関する実態調査」(2018年公表、FX経験者1,000人のインターネット調査)の「FXによる損失の繰越控除の認知と利用状況」

協会の調査では、損失の繰越控除を「確定申告したが適用できなかった」人が9.6%いました。理由は調査では分かりませんが、付表のつけ忘れや、途中の年の申告の抜けなど、手続きのつまずきも含まれるとみられます。「控除できると知っていたが申告しなかった」人も13.9%います。

忘れてしまう人は珍しくありません。損失が出たら、その年のうちに「翌年から3年は毎年申告する」と予定に入れておくと、途切れを防げます。

よくある質問

Q. 損失の年に申告を忘れて、翌年は利益も損失もありませんでした。間に合いますか?

A. 翌年分の申告をまだ出していなければ、損失の年の期限後申告と、翌年分の付表つきの申告を順に出すことで、繰越を続けられる可能性があります。翌年分を付表なしで出していた場合は、税務署に相談してください。

Q. 期限後申告をすると、ペナルティはありますか?

A. 損失の年のように納める税金がない申告なら、無申告加算税はかかりません。利益が出ていて税金を納める年の分を遅れて出すと、無申告加算税と延滞税がかかります。

Q. 3年以上前の損失は、今から申告しても使えますか?

A. 繰越できるのは損失の翌年から3年間です。期限後申告で損失を届けても、3年を過ぎた年の利益からは差し引けません。

Q. 税理士に頼むと費用はいくらかかりますか?

A. 事務所によって違います。まずは税務署の無料の相談窓口で、自分のケースで取り戻せる可能性があるかを確かめるとよいでしょう。

まとめ:取り戻せるかは「次の年分の申告をもう出したか」で決まる

  • FXの損失繰越は、損失の年から毎年続けて付表つきで申告することが条件
  • 損失の年に申告していなくても、その後の年も出していなければ、古い年から順に期限後申告して間に合う可能性がある
  • 申告で損失を書き忘れたときは、次の年分の申告の前なら更正の請求で直せる(措置法通達41の15-1)
  • 後の年分を先に出してから前の年を直しても、裁判で繰越は認められなかった(東京高裁 平成30年3月8日)
  • 迷ったら、申告書の控えと年間取引報告書を持って税務署か税理士へ

※この記事の情報は2026年10月12日時点のものです。主な出典: 国税庁タックスアンサーNo.1523「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」、国税庁「法令解釈通達 第41条の15関係(41の15-1・41の15-2)」、国税庁「税務訴訟資料」第268号-24(東京高裁 平成30年3月8日判決)、金融先物取引業協会「FXに関する実態調査」(2018年)。税金の扱いは個別の事情で変わります。実際の手続きは税務署か税理士にご相談ください。この記事は投資を勧めるものではありません。