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- 円キャリートレードの規模(残高)はどれくらい?
- ニュースで40兆円や360兆円と数字がばらばらなのはなぜ?
- キャリートレードの推移は?2026年10月はどうなっている?
- 日銀の利上げや長期金利の上昇で終わるの?また暴落は来る?
円キャリートレードの規模は、国際決済銀行(BIS)の中間的な推計で約40兆円(2,500億ドル)です。ただし公式の統計はなく、数え方を広げて約360兆円とする分析もあります。この記事では、BISの資料とシカゴの通貨先物の投機筋(ヘッジファンドなど短い期間で利益を狙う投資家)のデータ(1986年〜)をhiro-fx.comが集計しました。規模の推移と2026年10月の状況、日銀の利上げで終わるのかを解説します。
円キャリートレードの規模は?推計で約40兆円
図: BIS Bulletin No.90(2024年8月27日)、BIS四半期報告(2024年9月)、ロイター(2026年9月8日・証券会社ジェフリーズの分析)をもとにhiro-fx.com作成
円キャリートレードは、金利の低い円を借りて、金利の高いドルや株などで運用する取引です。規模の数字としてよく引用されるのが、BISが2024年8月の急落のあとにまとめた推計で、急落の直前で約40兆円(2,500億ドル)でした。BIS自身が「おおまかな中間の目安」とし、統計に表れない取引が多いため実際はもっと大きい可能性があると書いています。
近い数字がBISの統計にもあります。日本国外のノンバンク(ヘッジファンドなど銀行以外)向けの円の貸出で、2021年6月末の約25兆円から2024年3月末に約41兆円へ増えました。一方、ロイターによると、証券会社ジェフリーズはBISのデータを分析しました。国境をまたいだ円の借り入れは、2026年3月時点で過去最高の約360兆円だったとしています。
| 数字 | 何を数えたか | 時点・出典 |
|---|---|---|
| 約40兆円 | キャリートレードとみられる取引の中間的な推計 | 2024年8月の直前・BIS |
| 約41兆円 | 日本国外のノンバンク向けの円の貸出 | 2024年3月末・BIS |
| 約133兆円 | 日本国外のノンバンク向けの円建ての債権(貸出・債券・デリバティブ) | 2024年3月末・BIS |
| 約360兆円 | 国境をまたいだ円の借り入れ全体(キャリートレード以外も含む) | 2026年3月・ジェフリーズ(ロイター報道) |
※BISは国際決済銀行。BIS自身が、円の借り入れの数字にはキャリートレードと関係ないもの(長年続く取引の仕組みなど)が含まれうると注意している
数字の大きさだけを比べないことが大切です。360兆円は「円で借りたお金の全体」に近い数字で、そのすべてがキャリートレードではありません。ニュースで規模を見たら、何を数えた数字か、いつの時点かを確かめましょう。
なぜ規模は正確に分からない?数え方が3つある
| 数え方 | わかること | 弱いところ |
|---|---|---|
| ① 銀行の円の貸出(BISの統計) | 海外の投資家が円をいくら借りているか | 借りたお金を何に使ったかは分からない。四半期ごとで、数か月遅れて出る |
| ② シカゴの通貨先物(CFTCの統計) | 投機筋が円の売りにどれだけ傾いているか。毎週出る | 先物だけなので、全体のごく一部 |
| ③ 為替のデリバティブ(為替予約・スワップ) | 取引所を通さない円の売りの大きさ | 相対の取引で、全体を集計した統計がない |
※BIS四半期報告(2024年9月)の説明をもとにhiro-fx.com作成
統計には「キャリートレード」という項目がありません。円を借りた記録はあっても、それで何を買ったかまでは分からないためです。いくつかの統計を組み合わせて「このくらいだろう」と推計するしかなく、数字が調べる人によって変わります。
毎週出るので推移を追いやすいのが、②のシカゴの通貨先物です。ただし大きさは全体の一部です。2026年7月28日の投機筋の円の売り越し163,412枚は、1枚1,250万円で計算すると約2.0兆円です。BISの推計40兆円の20分の1ほどにすぎません。先物の数字は「規模そのもの」ではなく、「円売りへの傾きの温度計」として見るのが向いています。
【データ】投機筋の円売りの推移:2026年7月は1986年以降で3番目の多さ
図: 米国商品先物取引委員会(CFTC)の公表データ(シカゴの円の通貨先物・非商業部門の売り買いの差)をもとにhiro-fx.com作成。1986年1月15日〜2026年10月6日
投機筋(ヘッジファンドなど)の円の売り越しが15万枚を超えたのは、1986年以降で2007年・2024年・2026年の3回だけでした。最大は2007年6月26日の188,077枚、次が2024年7月2日の184,223枚、3番目が2026年7月28日の163,412枚です。どれも円キャリートレードが膨らんだと言われた時期です。
| 売り越しの山 | 売り越し | その日のドル円 | 3か月以内の安値 | 買い越しに転じるまで |
|---|---|---|---|---|
| 2006年10月24日 | 13.7万枚 | 119.33円 | 114.44円(−4.1%) | 43週後 |
| 2007年6月26日 | 18.8万枚 | 122.92円 | 111.59円(−9.2%) | 8週後 |
| 2013年12月24日 | 14.4万枚 | 104.27円 | 100.75円(−3.4%) | 106週後 |
| 2017年11月14日 | 13.6万枚 | 113.42円 | 107.41円(−5.3%) | 20週後 |
| 2023年11月14日 | 13.0万枚 | 150.48円 | 140.25円(−6.8%) | 39週後 |
| 2024年7月2日 | 18.4万枚 | 161.49円 | 139.58円(−13.6%) | 6週後 |
| 2026年7月28日 | 16.3万枚 | 163.87円 | 152.89円(−6.7%)※ | 6週後 |
※売り越しが13万枚を超えた週のうち、半年以上離れた山を選んだ。ドル円はDukascopy社の日足(その日の終値と、その後3か月の安値)。※2026年は9月30日までの安値。hiro-fx.comが集計
大きな売り越しの山のあと、3か月以内の安値は、山の日の終値より3〜14%低い水準でした(円高)。下げ幅が大きかったのは2024年の13.6%、2007年の9.2%、2026年の6.7%で、どれも売り越しが15万枚を超えた年です。この3回は山から6〜8週で買い越しに転じており、積み上がった円売りが一気に手じまわれたことが分かります。
ひとことで言うと:円売りが大きく積み上がるほど、巻き戻しの円高も大きくなりやすい。ただし山の時期を前もって当てるのは難しい
最新の値はIMMポジション・データベースで毎週更新しています。投機筋の円買いへの転換がドル円のその後にどう効いたかは、投機筋が「円買い」に転じた週、ドル円はその後どうなった?で48回分を検証しています。
2026年10月の円キャリートレードは?先物の円売りは解消
| 目安 | 2026年10月の値 | 2024年7月(前回の山) |
|---|---|---|
| 投機筋の円のポジション | 62,325枚の買い越し(10月6日) | 184,223枚の売り越し(7月2日) |
| 日米の政策金利の差 | 約2.63%(日銀1.25%・米国の実効FF金利3.88%) | 約5.2%(日銀0〜0.1%・米国5.25〜5.50%) |
| 日米の2年国債の利回りの差 | 2.86%(米4.79%・日1.93%) | ― |
| 日米の10年国債の利回りの差 | 2.20%(米5.22%・日3.02%) | ― |
| ドル円 | 158.30円(10月6日) | 161.49円(7月2日) |
※投機筋はCFTC、政策金利は日本銀行・ニューヨーク連銀(実効FF金利は2026年10月13日)、国債の利回りはhiro-fx.comの日米金利差ウォッチ(2026-10-15時点)
2026年10月の時点で、シカゴの先物に表れる円キャリートレードは、ほぼ解消しています。投機筋は10月6日時点で円を62,325枚の買い越しで、1986年以降の1,938週の中で上位2.4%に入る円買いの多さです。
2026年は7月に積み上がり、8〜9月に巻き戻した
2026年は春から円の売り越しが増え、7月28日に163,412枚まで積み上がりました。ドル円は163円台まで上昇しています。財務省によると、7月30日から8月26日にかけて15兆3,993億円の円買い介入が行われました。8月4日の週に、売り越しは45,473枚へ急減しました。
9月1日の週には売り越しが92,227枚へ戻しましたが、9月上旬に再び円が急騰します。ドル円は9月8日に152円台をつけ、9月15日の週には120,359枚の買い越しに転じました。日銀が9月18日に政策金利を1.25%へ上げたのは、この巻き戻しのあとです。
ただし、先物の円売りが消えても、円キャリートレードがすべて終わったとは言えません。ドル円は10月6日時点で158.30円と、160円に近い水準に戻っています。銀行からの円の借り入れや為替予約など、先物以外の円売りは毎週の数字では見えないためです。
あわせて読みたい:為替介入データベース(1991年〜の全介入と警戒メーター)
日銀の利上げで円キャリートレードは終わる?
| 時期 | 日銀の政策金利 | 米国の政策金利 | 金利の差 | その後 |
|---|---|---|---|---|
| 2007年6月 | 0.5% | 5.25% | 約4.75% | 8月から巻き戻し(サブプライム問題) |
| 2024年7月 | 0〜0.1%→0.25%(7月31日) | 5.25〜5.50% | 約5.2% | 8月5日に急落(利上げ・米国の景気不安) |
| 2026年10月 | 1.25%(9月18日から) | 実効FF金利3.88% | 約2.63% | 先物の円売りは9月に解消 |
※日本銀行・米連邦準備制度理事会(FRB)・ニューヨーク連銀の公表値をもとにhiro-fx.com作成
日銀の利上げは、円キャリートレードを縮める方向に働きます。円を借りる金利が上がり、日米の金利差が縮むほど、円で借りて運用するうまみが減るからです。2024年3月のマイナス金利の解除から2026年9月までに日銀は6回利上げし、日米の政策金利の差は約5.2%から約2.63%に縮みました。
それでも、差はまだ年2.6%ほどあります。2026年に投機筋の円売りが過去3番目まで膨らんだように、金利差が残るかぎり、円安が続けば円キャリートレードはまた積み上がりえます。「利上げで終わる」というより、利上げのたびに巻き戻しのきっかけが増え、積み上がりにくくなると考えるのが近いでしょう。
利上げの日に巻き戻しが起きるとは限りません。2024年7月31日の利上げは急落のきっかけの一つになりましたが、2026年9月18日の利上げは、先物の円売りがすでに解消したあとでした。日銀の利上げとドル円の関係は日銀が利上げするとドル円は下がるのか?で、2000年以降の8回を検証しています。
長期金利(日本国債の利回り)の上昇との関係
日本の長期金利の上昇も、円キャリートレードには逆風です。10年国債の利回りは2026年10月13日に3.019%と、3%台に乗っています。国内の金利が上がると、日本の投資家が海外に出していたお金を国内の債券に戻しやすくなり、円を売る流れが細ります。
一方で、米国の10年国債の利回りは5.22%と日本より高く、差は2.20%残っています。また、日本の長期金利の上昇が財政への不安からくる場合は、円が買われず、むしろ売られることもあります。国債の金利と値段の関係は国債の含み損はなぜ?金利上昇で値段が下がる仕組みで解説しています。
円キャリートレードの規模を自分で確かめる方法と備え
図: hiro-fx.com作成
シカゴの通貨先物の数字は、毎週火曜日時点のポジションが、米国の金曜日の午後(日本時間の土曜日の早朝)に公表されます。日米の金利差や、日銀・FOMCの日程とあわせて見ると、円売りがどれだけ偏っているかの目安になります。
FXでドル円の買いやスワップ狙いのポジションを持っているなら、規模の数字より大切なのは、急な円高に耐えられる量かどうかです。2024年は約1か月で20円、2026年は7月28日の163.87円から9月8日の152.89円まで約11円の円高になりました。巻き戻しのしくみと値動きはキャリートレードの巻き戻しとは?で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 円キャリートレードの規模は増えていますか、減っていますか?
A. 数え方で答えが変わります。ロイターが伝えたジェフリーズの分析では、国境をまたいだ円の借り入れは2026年3月に過去最高でした。一方、シカゴの先物の投機筋は、2026年7月の大きな売り越しから10月6日には買い越しに変わっています。
Q. 「残高」の最新の数字はどこで見られますか?
A. BISが四半期ごとに国際銀行統計を公表していますが、数か月遅れで、英語の統計です。毎週の動きを追うなら、CFTCの建玉(当サイトのIMMポジション・データベース)が手軽です。
Q. 日本の個人のFX(ミセス・ワタナベ)も円キャリートレードですか?
A. 低金利の円を売って高金利の通貨を買い、スワップを受け取る取引は、個人による円キャリートレードと言えます。やり方と注意点はキャリートレードは個人でもできる?で解説しています。
Q. 円キャリートレードが終わると、ドル円はどこまで下がりますか?
A. 決まった水準はありません。過去7回の大きな売り越しの山のあと、3か月以内の安値までの下げ幅は3〜14%ほどで、回によって大きく違いました。
まとめ:規模は推計で約40兆円、先物の円売りは2026年9月に解消
- 円キャリートレードの規模はBISの中間的な推計で約40兆円(2024年8月の直前)。公式の統計はない
- 360兆円は国境をまたいだ円の借り入れ全体の数字で、キャリートレード以外も含む
- 投機筋の円の売り越しが15万枚を超えたのは1986年以降で2007年・2024年・2026年の3回だけ
- 2026年10月6日の投機筋は62,325枚の買い越しで、先物の円売りは解消。ただしドル円は158円台に戻っている
- 日銀の利上げで日米の政策金利の差は約2.6%まで縮んだが、差が残るかぎり再び積み上がりうる
円売りの最新の傾きはIMMポジション・データベース、日米の金利差は日米金利差ウォッチで確認できます。
※この記事の情報は2026年10月15日時点のものです。主な出典: 国際決済銀行(BIS)「BIS Bulletin No.90」(2024年8月27日)・「BIS四半期報告」(2024年9月)、ロイター(2026年9月8日)、米国商品先物取引委員会(CFTC)「Commitments of Traders」、財務省「外国為替平衡操作の実施状況」、日本銀行、ニューヨーク連銀。ドル円はDukascopy社の日足をもとにhiro-fx.comが集計しました。過去の値動きは将来の値動きを示すものではありません。この記事は投資を勧めるものではありません。
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