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外国為替市場には様々な参加者がいますよね。
インターバンク、機関投資家、ヘッジファンド、その他金融機関、そして僕たちのような個人等々。
そんな中で、実はHFTというコンピューターによる自動取引が取引高全体の大きな割合を占め、為替市場に非常に大きな影響を与えています。
今回は為替市場に非常に大きな影響力のあるHFTについてわかりやすく解説していきます。
この記事について動画でも解説しておりますので、是非ご覧ください。
動画が見づらいという方は以下からテキストを読み進めて下さい。
HFTとは?
HFTとは「High Frequency Trading」の頭文字から略したもので、日本語で高頻度取引を意味します。
「超高速取引」「高速高頻度取引」「アルゴリズム高速取引」などと呼ばれることもあります。
高頻度取引というのは、1秒に満たないミリ秒単位という極めて短い時間の間に高速で何度も取引をするコンピューターによる自動取引システムのことです。
ミリ秒単位で小口で大量に注文を出したりキャンセルしたりを自動的に繰り返します。
1秒間の間に数千~数万の注文を繰り返すので、個人が行うスキャルピングなどの比ではないのがわかると思います。
勝率100%?HFTのアルゴリズム
HFTに明確な定義はありませんが、主な仕組みは以下のようになります。
HFTは市場の注文状況を瞬時に察知して、一般の投資家達よりも早く注文を約定させます。
そしてすぐさま小さな利ザヤをのせて売りに出し、確実に利益を得ます。これを1000分の1秒以下の高速で繰り返すのです。
要は注文状況から100.01円で確実に買う人がいるのがわかっている状態で100円で先回りして買うことができれば、100円で買って100.01円で売るということが瞬時にできるわけです。
市場の注文状況を察知してから注文がだされるので、言わば「後だしジャンケン」のようにほぼ確実に勝てるのです。
このような圧倒的なスピードでの取引を行うために、取引所システムと同じ場所にサーバーを置くコロケーションサービスを利用して、執行時間を極限まで短くしています。
市場におけるHFTのシェア率
株式市場であればある程度HFTによる取引高のデータがあるのですが、為替市場となると統計データが無い為、今回は株式市場におけるHFTのシェア率をベースにお話しさせて頂きます。
とは言え、HFTのアルゴリズムは株式市場でも為替市場でもほとんど同じように機能すると考えられるので、株式市場のシェア率が為替市場においてもある程度の判断基準にはなると思います。
TABB groupが算出したデータによると、アメリカの株式市場におけるHFTのシェア率は以下のようになります。
2009年が最もHFTによる取引高のシェアが多く全体の約60%となりました。
その後は緩やかにシェア率を下げていっていますが、また2017年にシェア率が上がり始めていますね。
いずれにせよ、このデータから近年ではおよそ50%以上はHFTによる取引であるということが言えそうです。
米国市場で少なくとも50%以上はHFTによる取引ということは、当然他の国やHFTが有効な他のアセットクラスにおいても同様のシェア率があると考えるのが普通です。
HFTの動向は無視できないどころか、もはやHFTの動向に合わせたトレードをしていく必要があると言えます。
HFTが市場に与える影響
市場の半分以上の取引高はHFTによるものですので、当然HFTが市場に与える影響力は非常に大きなものとなります。
HFTが市場に与える良い影響
メリットとしては非常にたくさんの注文を出し続ける為、市場に流動性及び即時性を供給し、レートの変動を緩やかにするという影響があります。
市場の半分以上はHFTによる取引ですので、仮にHFTが無かったら取引高も流動性も全て現状の半分以下になるということです。
そういった意味では流動性及び即時性を供給しているのはメリットの一つと言えます。
また、HFTによるポジションの大半はその日のうちに反対売買によって決済されるので、値動きを抑制する効果もあると言われています。
HFTが市場に与える悪い影響
市場に流動性や即時性を供給する一方で、HFTはレートの乱高下が起こる原因ともなります。
例えば、フラッシュクラッシュという急激にレートが乱高下するような現象の大きな原因の一つはHFTによるものです。
FXのフラッシュクラッシュとは?過去の実例から見る原因と対策方法
HFTは買ったポジションを瞬時に売るようなアルゴリズムになっています。
そして、この売りに対してまた別の業者のHFTが反応し、更に次の売りを呼び込みます。
この連鎖がものすごいスピードで起こり、なおかつ市場参加者が一時的に発注を控え流動性が低下するという条件が重なると、急激な暴落、暴騰が起こるのです。
HFTはそのアルゴリズムによって相場の急激な変動に過剰に反応し、ボラティリティの拡大を助長します。
これによってフラッシュクラッシュのような急落、急騰を引き起こし、市場を混乱させる要因の一つとなることが多々あります。
HFTを使用しているのは誰?個人でも使えるの?
HFTは主にヘッジファンドのCTAや機関投資家の間で広まっている取引手法です。
CTA(Commodity Trading Advisor)とは「商品投資顧問」や「商品取引アドバイザー」のことです。
個人でもHFTを使えるのか?
HFTが利用できるユーザーは現時点では法人のみとされています。
また国内においては2018年4月1日から金融庁は株式等に関する高速取引行為を行うには登録が必要になる制度を設けました。
2019年時点は12社が登録していて、うち11社は外国法人です。
実質的に個人ではHFTによる取引は難しいと言えます。
HFTの問題点と規制
HFTには問題点もあります。
そのうちの一つは「HFTが市場に与える影響」のところでもお話した「フラッシュクラッシュを引き起こす」ということです。
そしてもう一つは超高速で先回り取引を行うことでフロントランニングに近い取引が合法的に行われてしまうことです。
顧客から注文を受けた業者が顧客の注文の前に自分の注文を先に出す行為のこと
一般顧客が注文を出してから、その注文状況に応じてHFTが先回りした取引ができてしまうのは相場に不公平性が生じるとも言えます。
このような背景からHFTを登録制にしたり取引記録の作成を義務付けたりと、HFTに対する規制が各国で行われています。
日本におけるHFTの現状
日本の株式市場においては、2010年1月より東京証券取引所はアローヘッドというコロケーションサービスの提供が開始されています。
それ以降、日本の市場では特にHFTに対する規制が強化されていなかった為、海外の業者からは「HFT天国」などと揶揄されていました。
しかし、2018年からは金融庁によってHFTに対する規制が見直され登録制になりました。