想定為替レートとは?決算資料のどこに書いてある?調べ方と為替感応度

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こんな疑問を持つ方へ
  • 想定為替レートとは何?実際のレートとはどう違う?
  • 想定為替レートは決算短信や決算説明資料のどこに書いてある?
  • 気になる会社の想定為替レートを自分で調べるには?
  • 想定より円安になると、利益や株価はどうなる?

想定為替レートとは、会社が1年間の業績予想(売上や利益の見通し)を作るときに前提として置く為替レートのことです。輸出入や海外事業のある会社は「1ドル=155円で計算すると営業利益はいくら」と予想を立て、その前提を決算説明資料や決算短信に書いています。

この記事では、トヨタ自動車と本田技研工業の2026年8月の決算資料で、実際に書いてある場所を確かめます。調べ方の手順と、1円の円安で利益がいくら変わるか(為替感応度)も解説します。主要メーカーの想定と実際のドル円がどれだけずれたかも、日本銀行のデータで計算しました。

想定為替レートとは?会社が業績予想の前提に置く為替レート

誰の想定か米ドルの想定いつの資料か
トヨタ自動車(2027年3月期の通期)1ドル=160円
(期初は150円)
2026年8月4日 第1四半期決算
本田技研工業(同)1ドル=155円
(期初は145円)
2026年8月5日 業績予想の修正
主要上場メーカー103社の平均(東京商工リサーチ)151.4円2026年6月24日発表(期首の想定)
想定を置く2,290社の平均(帝国データバンク)147円87銭2026年6月12日発表(5月の調査)
日銀短観(全規模・全産業、2026年度)154.23円2026年10月1日発表(9月調査)

※各社の決算資料、東京商工リサーチ「想定為替レート」調査、帝国データバンク「企業の想定為替レートに関する動向調査(2026年度)」、日本銀行「短観(2026年9月調査)」をもとに作成(2026年10月28日確認)。各社の数字は2026年10月下旬〜11月の上期決算で見直される可能性があります

たとえば自動車メーカーは、アメリカで売った車の代金をドルで受け取り、円に直して利益を計算します。1ドル=150円と160円では、同じ1万ドルでも円の金額が10万円違います。だから業績予想には「何円で計算したか」という前提が欠かせません。

想定の水準は会社ごとに違います。上の表のとおり、同じ2026年度でも調査の平均は147〜154円台、個別の会社は155円や160円とばらばらです。会社がそれぞれの事情で決める「計画用の数字」で、決まった計算式はありません。

想定為替レートは1年間の平均で、年度末の予想ではない

想定為替レートは、ふつうその事業年度の期中平均(1年間の平均レート)の前提です。ホンダの決算説明資料も「期中平均為替レート」と書いています。「年度末に1ドル=155円になる」という予想ではない点に注意しましょう。

日銀短観のように、上期(4〜9月)と下期(10〜3月)に分けて想定を聞く調査もあります。会社によっては、上期決算のときに「下期の前提」だけを見直すこともあります。

実際のドル円より円高寄りに置く会社が多いのはなぜ?

帝国データバンクの解説によると、輸出企業が円高寄りの想定を置くのは、円安に振れたときに業績が上振れする余地を残すためです。逆に円安を前提にしすぎると、円高に戻ったときの下振れが大きくなります。想定為替レートは、為替がどこまで動いても計画が崩れないかを測る目安とも言えます。

想定為替レートは決算資料のどこに書いてある?

資料書いてある場所実例(2026年8月の資料)
決算説明資料(プレゼン資料)通期の業績見通しのページの下の「為替レート」の行。前回の想定と並べて載ることが多いトヨタ:12ページ「連結決算見通し要約」の米ドル 前回150円→今回160円
決算短信1枚目の業績予想の表ではなく、添付資料の業績の見通しの説明や、末尾の補足資料トヨタ:末尾の補足資料に「為替レート 円/米ドル 160(前提)」
業績予想の修正に関するお知らせ修正した理由の文章の中ホンダ:「通期の為替前提を1米ドル=145円から155円に見直し」
決算説明会の質疑応答など為替感応度や下期の前提を答えていることがある会社によって載せ方が違う

※トヨタ自動車「2027年3月期 第1四半期決算」説明資料・決算短信(2026年8月4日)、本田技研工業「業績予想の修正に関するお知らせ」(2026年8月5日)をもとに作成

決算説明資料は「業績見通し」のページの最後の行を見る

いちばん見つけやすいのは決算説明資料です。トヨタの2026年8月4日の資料では、12ページ「連結決算見通し要約」の表のいちばん下に「為替レート」の行があります。米ドルは前回の見通しが150円、今回が160円で「10円円安」、ユーロは180円から181円です。

同じ表に営業利益の見通し(3兆円→3兆4,000億円)も並ぶので、前提の見直しと利益の変化を一緒に読めます。次の13ページには、利益の増減を要因別に分けた図があり、為替の影響額もここに出ます。

決算短信は1枚目ではなく、添付資料と補足資料を探す

決算短信の1枚目(サマリー)は、決まった様式で売上や利益の予想を載せる表で、為替の欄はありません。想定為替レートは、添付資料の業績の見通しの説明や、末尾の補足資料に書かれることが多いです。トヨタは補足資料の表に「160(前提)」と載せています。

予想を途中で変えたときに出る「業績予想の修正に関するお知らせ」も大事な資料です。ホンダは2026年8月5日のお知らせで、為替が想定より円安で推移したことを理由に、前提を145円から155円に見直したと書いています。

想定為替レートの調べ方:1社ずつ調べる方法と全体の平均

想定為替レートの調べ方(1社ずつ調べるとき) 決算説明資料・決算短信・業績予想の修正のお知らせは、各社のIRページに載ります ① IRページへ 「会社名 IR」で検索 決算資料の一覧を開く → ② PDFを開く 決算説明資料か 決算短信(最新の回) → ③ ページ内を検索 「為替」「前提」で 検索して該当ページへ → ④ 日付を確認 資料の発表日と 「前回→今回」を見る

図: 1社ずつ調べるときの手順(hiro-fx.com作成)

気になる会社が1社なら、その会社のIRページ(投資家向け情報)から最新の決算説明資料を開くのが近道です。PDFの中を「為替」や「前提」で検索すると、該当ページにすぐ飛べます。スマホでもブラウザの「ページ内検索」が使えます。

全上場企業の決算短信は、日本取引所グループのTDnet(適時開示情報閲覧サービス)でも読めます。ただし公開されるのは開示日を含めて31日分なので、それより前の資料は各社のIRライブラリで探しましょう。

企業全体の平均を見たいときは調査を使う

調べる先何がわかるか更新の頻度
日銀短観「事業計画の前提となっている想定為替レート」企業規模・業種別の平均。上期・下期の別もある年4回(2026年9月調査は10月1日発表)
帝国データバンク「企業の想定為替レートに関する動向調査」中小企業を含む平均・中央値・最も多い水準年1回(2026年度は6月12日発表)
東京商工リサーチ「想定為替レート」調査主要上場メーカーの期首の平均と最も多い水準年1回(2026年度は6月24日発表)
QUICKなどの情報サービス上場企業の想定を証券コード順の一覧で有料(法人向け)

※日本銀行・帝国データバンク・東京商工リサーチ・QUICKの公式ページをもとに作成(2026年10月28日確認)

「日本の会社は全体で何円を想定しているか」を知りたいなら日銀短観が基本です。2026年9月調査(全規模・全産業)の2026年度の想定は154.23円で、6月調査の152.57円から円安方向に直りました。短観は3か月ごとに出るので、企業全体の見直しの流れもわかります。

為替感応度とは?1円の円安で営業利益がいくら変わるか

会社想定の見直し(米ドル)為替による営業利益の変化10で割った目安
トヨタ自動車150円→160円為替変動の影響 +4,800億円(うち輸出入の米ドル分 +4,200億円)米ドル分で1円あたり約420億円
本田技研工業145円→155円為替影響のうち円対米ドル +1,135億円1円あたり約110億円

※トヨタ「2027年3月期 第1四半期決算」説明資料13ページ(2026年8月4日)、ホンダ「2027年3月期 第1四半期 決算説明資料」15ページ(2026年8月5日)の通期見通しの前回比。10で割った値は目安で、会社が公表した感応度ではありません

為替感応度とは、為替が1円動いたときに、1年間の営業利益がいくら変わるかを表す数字です。輸出の多い会社では、1円の円安で利益が増え、1円の円高で減ります。想定為替レートとセットで見ると、実際のレートが想定からずれたときの影響を見積もれます。

計算の目安は「感応度 × (実際のレート − 想定のレート)」です。ホンダは10円の見直しで円対米ドルの影響が+1,135億円だったので、1円あたりでは約110億円になります。感応度をはっきり公表している会社もあり、決算説明資料や質疑応答に載っています。

感応度とずれの大きさから、利益への影響を見積もる早見表

1円あたりの感応度1円ずれたとき5円ずれたとき10円ずれたとき
10億円10億円50億円100億円
50億円50億円250億円500億円
100億円100億円500億円1,000億円
400億円400億円2,000億円4,000億円

※影響額 = 感応度 × ずれた円の大きさ(hiro-fx.com作成)。為替予約(先に為替レートを決めておく取引)や海外生産の割合で、実際の影響は小さくなったり遅れたりします

注意したいのは、感応度の向きが会社によって違うことです。原材料や商品を輸入する会社は、円安でコストが増えるので感応度がマイナスになります。また為替予約でレートを先に決めている分は、すぐには影響が出ません。

想定より円安・円高になると業績と株価はどうなる?

輸出企業で、実際のドル円が想定より円安になったとき 円高にずれたときは逆向き(利益が減る・下方修正)。輸入が多い会社は向きが逆 ① ずれる 実際のドル円が 想定より円安で推移 → ② 利益が増える ドルの売上を円に 直すと金額が増える → ③ 想定を見直す 決算で想定を円安に 直し、上方修正 → ④ 株価は? 発表前に織り込まれ 動かないことも

図: 輸出企業の想定為替レートと業績修正の流れ(hiro-fx.com作成)

実際のドル円が想定より円安で推移すると、輸出企業はドルの売上を円に直した金額が増えます。その分は決算のときに想定の見直しとして反映され、業績予想が上方修正されることがあります。円高にずれた場合は逆に、下方修正の理由になります。

実例がホンダです。2026年8月5日、為替が想定より円安で推移したことなどから、前提を145円から155円に直しました。あわせて通期の営業利益予想を5,000億円から6,500億円(30.0%増)に引き上げています。

上方修正でも株価が上がるとは限らない

株価との関係は単純ではありません。ドル円の動きは毎日見えているので、投資家は「この円安なら上方修正しそうだ」と先に予想して株を売り買いします。そのため、修正が発表されても株価がほとんど動かないことや、想定より小さい修正で下がることもあります。

想定為替レートは、業績が為替でどちらに振れやすいかを知る手がかりです。株の売買を決める材料の1つにとどめ、関税や販売台数など為替以外の要因もあわせて見ましょう。

あわせて読みたい:円安はなぜ輸出に有利?輸出企業が儲かる仕組みと輸入・家計のデメリット

【データ】主要メーカーの想定は実際のドル円より何円円高だった?

主要メーカーの期首の想定と、実際のドル円の平均 想定=東京商工リサーチ調査の平均(3月決算の主要上場メーカー)/実際=日銀の東京市場17時の月中平均を年度で平均 期首の想定(平均) 実際のドル円(年度の平均) 135円 140円 145円 150円 155円 160円 165円 2024年度 143.5円 152.5円 実際は9.0円円安 2025年度 141.6円 150.7円 実際は9.1円円安 2026年度上期 151.4円 159.3円 実際は7.9円円安 2026年度は4〜9月の6か月。想定は期首(4〜5月の決算発表時点)の値で、その後の見直しは含まない

図: 主要上場メーカーの期首の想定為替レート(東京商工リサーチ調査の平均)と、実際のドル円(日本銀行「東京市場 ドル・円 スポット 17時時点/月中平均」を年度で平均)。2024年度〜2026年度上期(2026年9月まで)、hiro-fx.comが集計

主要メーカーの期首の想定(平均)は、2024年度・2025年度・2026年度上期の3回とも、実際のドル円より約8〜9円円高でした。差はそれぞれ9.0円・9.1円・7.9円です。この3年は円安が想定を上回り続け、上方修正の余地が生まれやすい年でした。

ただし、いつも円安にずれるわけではありません。年度が始まる直前の3月の平均レートと、その年度の平均を2000〜2025年度の26年分で比べました。ずれは平均4.4円で、向きは円安方向が12回、円高方向が14回とほぼ半々です。

年度の平均が3月の水準からずれた大きさ年数(2000〜2025年度の26年)
3円未満11年
3〜5円7年
5〜10円6年
10円以上2年(2022年度 +16.9円・2023年度 +10.7円)

※日本銀行「東京市場 ドル・円 スポット 17時時点/月中平均」をもとにhiro-fx.comが集計。3月の平均を、その年度の想定の代わりに使った試算(実際の会社の想定とは異なります)。+は円安方向

5円以上ずれた年は26年中8回です。感応度が1円あたり100億円の会社なら、5円のずれで約500億円の差になります。月ごとの実際のドル円は、当サイトのドル円 相場アーカイブで確かめられます。

よくある質問

Q1. 「想定為替レート140円」とはどういう意味ですか?

A. 1ドル=140円を前提に業績予想を作った、という意味です。2025年度(2026年3月期)の期首は140円が最も多く、東京商工リサーチの調査では主要上場メーカー98社中48社でした。実際の2025年度の平均は150.74円で、約9円円安で推移しました。2026年度は150円が最多(103社中60社)で、140円を置いたのは1社だけでした。

Q2. 想定為替レートはいつ見直されますか?

A. 多くの会社は四半期ごとの決算発表のときに見直します。2026年度の上期決算は10月下旬〜11月中旬に集中します。トヨタは2026年11月5日、ホンダは11月10日に発表する予定です(2026年10月28日時点)。

Q3. 想定為替レートと実勢レートの違いは何ですか?

A. 実勢レートは、外国為替市場で実際に取引されているレートです。想定為替レートは会社が計画のために決めた前提で、市場の値とは別物です。両者の差が、業績の上振れ・下振れの原因になります。

Q4. 銀行が毎朝決める仲値(TTM)とは違いますか?

A. 違います。仲値は銀行が平日の朝に決める、お客さまとの両替や送金の基準になるレートです。想定為替レートは各社が業績予想のために決める数字です。仲値の動き方は仲値・時間帯アノマリー統計で見られます。

Q5. ドル以外の想定為替レートもありますか?

A. あります。トヨタはユーロも181円(2026年8月4日時点)と示しています。ホンダは利益の増減の説明で、米ドルのほかアジア通貨の影響も分けて載せています。海外の売上が多い地域の通貨ほど、利益への影響が大きくなります。

まとめ:想定為替レートは業績予想の前提、決算説明資料の見通しのページで確認

  • 想定為替レートは、会社が1年間の業績予想を作るときに前提にする為替レート(ふつうは期中平均)
  • 決算説明資料の「業績見通し」のページの下、決算短信の添付資料・補足資料、業績予想の修正のお知らせに書いてある
  • 1社ずつはIRページのPDFを「為替」で検索。全体の平均は日銀短観・帝国データバンク・東京商工リサーチの調査で見られる
  • 為替感応度は1円の動きで営業利益がいくら変わるか。ホンダは10円の見直しで円対米ドル+1,135億円(2026年8月)
  • 主要メーカーの期首の想定は、2024〜2026年度上期の3回とも実際より約8〜9円円高だった

ドル円の水準が歴史的に見て円高か円安かは、今は円高?円安?何円から円高かを過去の平均と購買力平価で判定で確かめられます。円安が輸出企業の利益を押し上げる仕組みは円安はなぜ輸出に有利?で解説しています。

※この記事の情報は2026年10月28日時点のものです。主な出典: トヨタ自動車「2027年3月期 第1四半期決算」決算説明資料・決算短信(2026年8月4日)、本田技研工業「業績予想の修正に関するお知らせ」「2027年3月期 第1四半期 決算説明資料」(2026年8月5日)、日本銀行「短観(2026年9月調査)」「時系列統計データ(東京市場 ドル・円 スポット 17時時点/月中平均)」、帝国データバンク「企業の想定為替レートに関する動向調査(2026年度)」「想定為替レートは企業の『耐性指標』」、東京商工リサーチ「想定為替レート」調査(2025年6月25日・2026年6月24日)、日本取引所グループ「適時開示情報閲覧サービス」。この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、投資の助言ではありません。株式や為替の取引の判断はご自身の責任でお願いします。