為替介入の財源はどこから?税金ではない理由と、国は儲かるのかを試算

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こんな疑問を持つ方へ
  • 為替介入のお金(原資)はどこから出ている?税金なの?
  • 外為特会(外国為替資金特別会計)とは?
  • 円買い介入で国は儲かったの?利益や含み益はどうなる?
  • 介入の利益は、私たちの暮らしに回ってくる?

為替介入の財源は、国の外国為替資金特別会計(外為特会)にあるお金で、税金ではありません。円売り介入は政府短期証券という短期の借金で集めた円、円買い介入は過去の円売り介入などでためたドルを使います。当サイトが財務省の公表データで概算すると、ドルを買った平均の値段は1ドル約102円、2022年以降の円買い介入で売った平均は約154円でした。この記事では、お金の流れと、介入の利益や含み益がどこへ行くのかを解説します。

為替介入の財源は外為特会、税金ではない

円売り介入(円高を止める)円買い介入(円安を止める)
使うお金政府短期証券を出して集めた円外為特会が持つドル(外貨準備)
お金の集め方市場から短期で借りる米国債などを売る、預金を取り崩す
介入で手に入るものドルなどの外貨円
手に入れたものの行き先米国債などで運用する政府短期証券の返済に充てる

※財務省「外国為替資金特別会計について」「特別会計ガイドブック」、日本銀行「外国為替市場介入事務の概要」をもとにhiro-fx.com作成

為替介入のお金は、すべて外為特会という国の会計から出ます。日銀は財務大臣の代理人として売り買いをしますが、使うのは日銀のお金ではありません。税金を集めて使う一般会計とは別の財布なので、「介入に税金が使われる」わけではありません。

円売り介入では、外国為替資金証券という政府短期証券(数か月で返す短期の国債)を出して円を集め、その円でドルを買います。円買い介入では反対に、持っているドルを売って円を受け取ります。

外為特会とは?資産は約191兆円

外為特会(外国為替資金特別会計)は、為替介入の資金を管理する国の会計です。財務省の財務書類によると、2025年3月末の資産は191兆3,753億円で、そのうち米国債などの有価証券が138兆4,806億円でした。負債の中心は政府短期証券で、97兆5,544億円です。

日本の外貨準備(2026年8月末で1兆2,075億ドル)の多くは、この外為特会が持っています。つまり外貨準備は、過去の円売り介入で買ってためてきたドルが中心です。

円売りでためたドルを、円買いで売り戻すしくみ

図1 為替介入のお金はぐるっと回る 円高のときに借金で円を集めてドルを買い、円安のときにそのドルを売って借金を返す ① 円を借りる 政府短期証券を出し 市場から円を 集める → ② 円売り介入 集めた円を売って ドルなどを買う (円高のとき) → ③ 運用する 買ったドルを 米国債などで持ち 利息を受け取る → ④ 円買い介入 持っているドルを 売って円を買う (円安のとき) → ⑤ 借金を返す 受け取った円で 政府短期証券を 返す(償還)

図: 為替介入のお金の流れ(財務省「特別会計ガイドブック」をもとにhiro-fx.com作成)

外為特会のお金の流れは、図のように一回りします。円高のときに借金で円を集めてドルを買い、そのドルを米国債などで運用して利息を受け取ります。円安になったら、そのドルを売って円を買い、受け取った円で借金(政府短期証券)を返します。

ですから、円買い介入でドルを売っても、新しく税金が必要になるわけではありません。むしろ、安くドルを買って高く売れれば、その差は国にとって利益になります。

【データ】為替介入で国は儲かった?ドルを買った値段と売った値段

図2 為替介入でドルを売り買いした平均の値段(1ドル何円か) 円売り介入はドルを買った値段、円買い介入はドルを売った値段。介入した日のドル円終値で換算した概算 円売り介入 全体(1993〜2011年) 約102円(321日) うち2003〜2004年 約111円 うち2010〜2011年 約80円 円買い介入 1991〜1998年 約129円 円買い介入 2022年 約146円 円買い介入 2024年 約157円 円買い介入 2026年4〜5月 約157円

図: 為替介入でドルを売り買いした平均の値段(財務省「外国為替平衡操作の実施状況」の日次データ1991年5月〜2026年5月を、介入した日のドル円終値でドルに換算してhiro-fx.comが計算)

財務省の公表データを、介入した日のドル円終値でドルに直して概算しました。円売り介入(321日・合計80兆9,038億円)で買ったドルは約7,931億ドル、平均の値段は1ドル約102円でした。一方、2022年〜2026年5月の円買い介入(10日・36兆2,461億円)で売ったドルは約2,354億ドル、平均は約154円です。

仮に、2022年以降に売ったドルを平均102円で買っていたとすると、差は1ドルあたり約52円、合計で約12.2兆円になります。2026年7〜8月分(15兆3,993億円)も同じように計算すると、さらに約5.5兆円が加わります。

ポイント:これはあくまで「平均の値段どうし」を比べた試算です。外為特会のドルには運用でふえた分もあり、どのドルを売ったかは区別されません。財務省は介入ごとの差益の額を公表していません。

民間の試算もあります。日本総合研究所は、外為特会の損益の分かれ目を1ドル115円前後と推計しています。そのうえで、2026年の介入で6〜7兆円の差益が「政府短期証券の残高が減る形」で実現したと試算しています。

決算の「売買差益」は数千億円にとどまる

一方、外為特会の決算に出てくる「外国為替等売買差益」は、2022年度が1,693億円、2024年度が3,780億円でした。決算の計算のしかたは、上の試算とは違います。介入で国がいくら得をしたかは、計算の前提で大きく変わる点に注意が必要です。

介入の利益や含み益はどこへ行く?剰余金と一般会計への繰入

2024年度決算2025年度決算
剰余金(決算上の利益)5兆3,603億円5兆565億円
外国為替資金への積み立て1兆3,717億円1兆3,414億円
一般会計への繰入3兆2,007億円(2025年度予算へ)3兆1,300億円(2026年度予算へ)
翌年度の外為特会の収入へ7,879億円5,850億円

※2024年度は財務省「外国為替資金特別会計 令和6年度決算」。2025年度は共同通信(2026年7月31日)・日本総合研究所の報道・解説による。外国為替資金=円高で損が出たときの備え

外為特会の毎年の利益(剰余金)の中心は、持っているドルの運用で得る利息です。2024年度は収入5兆7,129億円のうち、運用収入が4兆8,370億円を占めました。そこから政府短期証券の利払いなどを引いた残りが剰余金です。

剰余金の一部は、円高で損が出たときの備え(外国為替資金)に積み立てます。残りは、国の一般会計に繰り入れられ、予算全体の財源の1つになります。2023年度には、防衛力の強化に充てる資金の財源として、特例で1兆2,004億円を一般会計に繰り入れました。

含み益50兆円はすぐには使えない

外為特会のドルは円安のおかげで値上がりしていて、2025年3月末の「為替換算差損益」(含み益)は50兆2,515億円でした。ただ、この含み益は2026年10月時点の法律では剰余金にできず、予算に回せません。

含み益を使うにはドルを売って円にする必要があり、それは円買い介入と同じ効果を持ちます。2022年10月には当時の岸田首相が、外貨を円に換えることは実質的に円買い介入になると述べ、財源に使う案に慎重な姿勢を示しました。

税金ではないのに「国民負担」になりうる理由(注意点)

リスク内容
円高による損資産はドル、負債は円なので、大きな円高になると損が出る。日本総合研究所によると、2010〜2011年度は資産より負債が多い状態になった
金利の上昇日本の金利が上がると、政府短期証券の利払いが増え、一般会計に回せるお金が減る
備えの不足外国為替資金の積み立ては2024年度末で約30兆円。目安(持っている外貨の30%)に届いていないとされる

※日本総合研究所のレポート(2026年8月21日)、財務省「特別会計ガイドブック」をもとにhiro-fx.com作成

為替介入の財源は税金ではありませんが、外為特会の損得は、最終的には国の財政につながっています。外為特会が大きな損を出せば、一般会計に回るお金が減ったり、穴埋めが必要になったりする可能性があるためです。

2026年10月時点では円安でドルが値上がりしているため、外為特会は大きな含み益を抱えています。ただ、それは為替の水準しだいで変わります。「介入は必ず儲かる」「国民の負担はゼロ」と言い切れるものではない点に注意が必要です。

為替介入のお金の数字を自分で確かめる方法

図3 為替介入とお金の数字を確かめる公表資料 どれも財務省のウェブサイトで、誰でも無料で見られる ✓ 外国為替平衡操作の実施状況(毎月末・四半期ごと) 介入した金額。毎月の合計と、3か月ごとの日ごとの内訳 ✓ 外貨準備等の状況(毎月上旬) 外貨準備の残高と内訳(証券・預金・金など)。介入があった月は大きく減る ✓ 外国為替資金特別会計の決算(毎年7月末ごろ) 剰余金と、一般会計への繰入の額 ✓ 外為特会の財務書類 資産・負債と、含み益(為替換算差損益)の額

図: 為替介入とお金の数字を確かめる公表資料(hiro-fx.com作成)

介入があった月の終わりには「外国為替平衡操作の実施状況」で金額が出て、翌月上旬の「外貨準備等の状況」で外貨準備の減り方がわかります。2026年は4〜5月に11兆7,349億円、7月30日〜8月26日に15兆3,993億円の介入がありました。8月末の外貨準備は、前の月から796億ドル減っています。

あわせて読みたい:為替介入データベース(1991年以降の全介入と当日の値動き)

よくある質問

Q1. 為替介入の利益は、国民に配られますか?

A. 直接配られることはありません。外為特会の剰余金の一部が一般会計に繰り入れられ、国の予算全体の財源の1つとして使われます。

Q2. 外為特会の含み益を使えば、減税や給付ができますか?

A. 2026年10月時点の法律では、含み益(為替の評価益)は剰余金にできません。使うにはドルを売る必要があり、それは円買い介入と同じ効果を持つため、政府は慎重な立場をとってきました。

Q3. 円売り介入の借金の利息は、誰が払っていますか?

A. 外為特会が払っています。持っているドルの運用収入(利息など)から政府短期証券の利払いをまかなうしくみで、税金で払っているわけではありません。

Q4. 為替介入で国が損をしたことはありますか?

A. 大きな円高の時期には、持っているドルの値打ちが下がって損が出ました。日本総合研究所によると、2010〜2011年度は外為特会の資産より負債が多い状態になりました。

Q5. 円買い介入では、アメリカの国債を売るのですか?

A. 外為特会が持つ外貨の預金や証券(米国債など)を使います。2026年8月には、米国債を売らずに担保にしてドルを借りる、米国の中央銀行の制度(FIMAレポ)を使う予定も表明されました。

まとめ:為替介入の財源は税金ではなく、外為特会のお金

  • 為替介入のお金は外為特会から出る。税金を集める一般会計とは別の財布
  • 円売り介入は政府短期証券で集めた円、円買い介入はためてきたドルを使う
  • ドルを買った平均は約102円、2022年以降に売った平均は約154円(介入日の終値での概算)。平均どうしの差は2022年〜2026年5月分で約12兆円
  • 毎年の剰余金(2025年度は5兆565億円)の一部は一般会計に繰り入れられる。含み益50兆円はすぐには使えない
  • 円高や金利上昇で損が出れば財政に響くため、「負担はゼロ」とは言い切れない

過去の全介入の金額は為替介入データベースで、介入の効果は日銀が為替介入するとどうなる?で確認できます。

※この記事の情報は2026年10月5日時点のものです。主な出典: 財務省「外国為替資金特別会計について」「特別会計ガイドブック」「外国為替資金特別会計 令和6年度決算」「外国為替資金特別会計財務書類(令和6年度)」「外国為替平衡操作の実施状況」「外貨準備等の状況」、日本銀行「外国為替市場介入事務の概要」、日本総合研究所(2026年8月21日)、共同通信(2026年7月31日)、ロイター(2022年10月)。ドルの平均の値段と差の試算はhiro-fx.comが財務省の公表データとドル円の日足から計算した概算で、外為特会の実際の損益とは一致しません。この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、投資助言ではありません。