雇用統計はトレードしないほうがいい?初動に乗った128回の結果で検証

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こんな疑問を持つ方へ
  • 雇用統計の日は、トレードしないほうがいいの?
  • 雇用統計で稼ぐ手法ってあるの?初動に乗れば勝てる?
  • 両建てしておけば、どっちに動いても大丈夫?
  • 持っているポジションはどうする?いつから取引を再開していい?

FX初心者のうちは、雇用統計の発表をまたいで取引を持たず、発表の直後にも新しく取引しないのが無難です。当サイトが2016年以降の雇用統計128回を1分ごとのデータで調べました。発表1分後に初動の向きに乗っても、1時間後の損益は平均−1.2pips(売買コスト抜き)で、プラスで終わったのは128回中59回です。この記事では、雇用統計でトレードしない人が多い理由をデータで確かめ、よく紹介される手法や両建ての注意点、取引を再開する目安まで解説します。

この記事の内容でクイズ(55秒):雇用統計の直後に初動へ飛び乗ると、1時間後の損益は平均でどうだった?

雇用統計はトレードしないほうがいい?結論

図1 雇用統計の日の「トレードしない」の中身 「取引そのものをやめる」ではなく、危ない時間を避けるという意味 発表の前 持っている取引を 決済するか、 量を減らしておく → 発表の直後 慌てて 飛び乗らない → 落ち着いてから スプレッドが戻り、 値動きが落ち着いて から考える

図: 雇用統計の日の「トレードしない」の中身(hiro-fx.com作成)

雇用統計(米国の雇用の統計)は、原則として毎月第1金曜日の日本時間21:30(冬は22:30)に発表されます。発表の瞬間はドル円が数秒で大きく動き、取引のコストも一時的に高くなります。

FX会社の解説でも、発表をまたぐ取引は慎重に、発表の前に決済しておくのも選択肢、と説明されています(DMM FX・SBI FXトレード)。この記事でいう「トレードしない」は、FXをお休みするという意味ではありません。発表をまたいで持たないこと、直後に飛び乗らないこと、の2つです。

ポイント:当サイトの集計では、雇用統計の直後に初動に乗っても、1時間後の平均はほぼゼロ(−1.2pips)。そこに広がったスプレッドのコストが上乗せされます。

雇用統計でトレードしない人が多い3つの理由

図2 雇用統計の発表の前後に起きること 発表の直前から直後の数分間 起きること 取引する人にとっての問題 スプレッドが広がる 買値と売値の差(取引のコスト)がふだんより大きい 上下に大きく振れる 動いた向きに乗っても、すぐ逆に戻されることがある 注文が滑る(スリッページ) 損切りの逆指値も、思った価格で止まらないことがある

図: 雇用統計の発表の前後に起きること(各FX会社の説明をもとにhiro-fx.com作成)

理由1. スプレッド(取引のコスト)が広がる

スプレッドは、買うときの値段と売るときの値段の差で、FXの実質的な取引コストです。国内のFX会社の多くは、ドル円のスプレッドを「原則固定」で示していますが、重要な経済指標の発表時は例外です。たとえばDMM FXは「経済指標の発表時など」に拡大する可能性があると説明し、みんなのFXも「重要な経済指標の結果発表時に相場が急変した場合」を例外に挙げています。

理由2. 上下に大きく振れて、向きが読めない

雇用統計は、非農業部門雇用者数・失業率・平均時給など複数の数字が同時に出ます。数字ごとに強弱が分かれたり、前の月の数字が大きく修正されたりすると、最初に動いた向きからすぐに逆へ動くことがあります。結果を予想して当てても、利益になるとは限りません。

理由3. 損切りが思った価格で止まらない

値動きが速いと、成行の注文や損切りの逆指値の注文が、指定した価格から離れて成立することがあります(スリッページ)。たとえば20pips下で損切りするつもりでも、実際にはそれより下で決済されることがあり、予定より損が大きくなります。

【データ】雇用統計の前後、ドル円はどうだった?128回で検証

図3 雇用統計の前後の、ドル円のスプレッドの平均 2026年1〜9月の雇用統計9回。Dukascopy社(スイスの銀行)の配信レートで、1秒ごとのスプレッドを平均 0pips 1pips 2pips 3pips 15〜10分前 0.44pips 直前の1分 1.13pips 発表〜10秒 2.65pips 10秒〜1分後 1.02pips 1〜2分後 0.77pips 4〜5分後 0.59pips 9〜10分後 0.63pips 29〜30分後 0.50pips 緑=ふだんの目安(発表15〜10分前)、橙=発表から1分以内

図: 雇用統計の前後のドル円のスプレッドの平均(2026年1月9日〜9月4日の9回。Dukascopy社のティックデータをもとにhiro-fx.comが集計)

ここからは、当サイトが集めたデータで「トレードしない理由」を確かめます。値動きは2016年1月〜2026年9月の雇用統計128回(Dukascopy社のドル円1分足)、スプレッドは同社のティックデータがそろう2026年の9回で集計しました。比べる相手として、発表のない翌週の同じ曜日・同じ時刻(126回)も使っています。

スプレッドは、発表の瞬間にふだんの約6倍

ドル円のスプレッドの平均は、発表15〜10分前が約0.44pipsでした。それが発表直前の1分で約1.13pips(約2.6倍)、発表から10秒までは約2.65pips(約6倍)に広がっています。1秒ごとに見たいちばん広い瞬間は、9回の平均で約5.0pipsでした。

広がったスプレッドは、発表から4〜5分後には約0.59pips(約1.3倍)まで戻っています。なお、これは海外の銀行の配信レートでの数字で、国内のFX会社のスプレッドそのものではありません。ただ、発表の瞬間にコストが跳ね上がり、数分で戻るという形は同じだと考えられます。

発表をまたいで持つと、1分で30pips逆に動いた回が約28%

発表から1分以内の動き買いを持っていた場合(下がった回)売りを持っていた場合(上がった回)
20pips以上 逆に動いた52回(41%)57回(45%)
30pips以上 逆に動いた35回(27%)36回(28%)
50pips以上 逆に動いた18回(14%)19回(15%)
100pips以上 逆に動いた2回(2%)5回(4%)

※hiro-fx.comの集計(雇用統計128回)。発表直前の価格から、発表後1分間の安値・高値までの差

発表の直前に取引を持っていたとします。発表から1分以内に、その取引と逆向きに30pips以上動いた回は、買いなら128回中35回、売りなら36回ありました。30pipsは、1万通貨で3,000円、10万通貨なら3万円の損にあたります。発表1分後に上がった回も128回中72回とほぼ半々で、持つ向きで有利・不利は決まりません。

初動に飛び乗っても、1時間後の平均はほぼゼロ

やり方(過去の雇用統計で計算)1時間後の平均プラスで終わった回
発表1分後に、それまでの向きに乗る−1.2pips59回(46%)
発表15分後に、それまでの向きに乗る−4.1pips53回(41%)

※hiro-fx.comの集計(雇用統計128回)。乗った時点の価格から、発表60分後の価格までの差。スプレッドや滑りなどの売買コストは含めていない

「初動に乗れば勝てる」と考える人もいます。そこで、発表1分後の価格でそれまでの向きに乗り、発表60分後に決済したと仮定して計算しました。結果は平均−1.2pipsで、プラスで終わったのは128回中59回です。15分待ってから乗っても、平均−4.1pipsでした。

当サイトの雇用統計の値動きの記事では、1分後の向きが1時間後も同じだった回が73%あると紹介しました。それでも利益にならないのは、乗った価格よりさらに先へ伸びるとは限らないからです。初動に乗った128回のうち65回(51%)は、その後の1時間で20pips以上逆に動いていました。ここにスプレッドの広がりと滑りが加わります。

上下どちらにも振れる「往復」は、発表のない日の約10倍起きた

発表から1分以内に、直前の価格から上にも下にも10pips以上振れた回は、128回中21回でした。発表のない日は126回中2回しかありません。発表から1時間で上下どちらにも20pips以上振れた回も、128回中32回(25%)ありました。一度動いた向きにすぐ逆へ振られる、いわゆる「往復ビンタ」が起きやすいということです。

値動きが落ち着くまで、どれくらいかかる?

図4 雇用統計の日の、1分あたりのドル円の値幅 1分足の高値と安値の差を、時間帯ごとに平均(雇用統計128回)。「発表の1分間」だけ目盛りの外 0pips 4pips 8pips 12pips 16pips 発表10〜5分前 発表の1分間 1〜5分後 5〜10分後 10〜15分後 15〜30分後 30〜45分後 45〜60分後 発表の1分間は平均46.0pips(棒は途中で切っている) 2.6pips46.0pips12.5pips8.6pips7.3pips6.0pips5.2pips4.3pips

図: 雇用統計の日の1分あたりのドル円の値幅(2016年1月〜2026年9月の128回。Dukascopy社の1分足をもとにhiro-fx.comが集計)

発表10〜5分前の1分あたりの値幅は、平均約2.6pipsでした。これを「ふだん」とすると、1〜5分後でも約12.5pips(4.8倍)あります。15〜30分後は約6.0pips(2.3倍)、45〜60分後でも約4.3pips(1.7倍)でした。発表から1時間たっても、値動きはまだ発表前より大きいことがわかります。

スプレッドは数分で戻りますが、値動きの大きさが落ち着くには時間がかかります。取引を再開するなら、少なくとも数分待ってスプレッドが戻ったことを確かめ、その後もしばらくは値動きが大きい前提で取引の量を決めるのが安全です。

雇用統計のトレード手法と、それぞれの注意点

図5 雇用統計でよく紹介される4つのやり方 過去の雇用統計128回で計算した結果(売買コスト抜き) やり方 過去のデータでは 主な注意点 発表前に予想して持つ 1分後に上がった回は56% 外れると一瞬で大きな損 直後に初動へ乗る 1時間後の平均−1.2pips スプレッドと滑りで不利 落ち着いてから乗る 15分後に乗ると平均−4.1pips まだふだんの2倍以上動く 上下に逆指値を置く 反対側まで戻された回25% 約定が滑る・往復で損

図: 雇用統計でよく紹介される4つのやり方(hiro-fx.comの集計。2016年1月〜2026年9月の128回)

上位の解説記事やFX会社のコラムでは、雇用統計の「稼ぎ方」として主に次の4つが紹介されています。どれも必ず利益になる方法ではありません。過去のデータでどうだったかと、気をつける点をまとめます。

1. 発表前に、結果を予想して持つ

市場の予想より強い結果になると考えれば買い、弱いと考えれば売る、というやり方です。当たれば大きく取れますが、外れると発表の1分で数十pips逆に動きます。過去128回では、発表1分後に上がった回が72回と、ほぼ半々でした。

2. 発表の直後に、初動の向きへ乗る

結果を見てから動いた向きについていくやり方です。予想を当てる必要はありませんが、スプレッドがいちばん広く、注文も滑りやすい時間に取引することになります。データでは、1分後に乗って1時間持った場合の平均は−1.2pipsでした。

3. 落ち着いてから、流れに乗る

DMM FXのコラムなどで紹介されている、相場が落ち着いて向きが見えてから取引する考え方です。スプレッドの不利は小さくなりますが、15分後に乗った計算でも平均−4.1pipsで、待てば有利になるわけではありませんでした。

4. 上下に逆指値の注文を置いておく

発表前に、今の価格の上と下に新規の逆指値注文を置き、動いた方向だけ約定させるやり方です。片方が約定したらもう片方を取り消す、OCO注文を使います。上下20pipsに置いた計算では、約定したあと反対側の価格まで戻された回が128回中32回ありました。この場合は40pips以上の損になり、急な動きで約定の価格も滑りやすくなります。

ポイント:それでも取引するなら、取引の量をふだんより減らし、損切りの逆指値を入れ、発表直後の数分は避けるのが最低限の備えです。

あわせて読みたい:米指標の初動は続くのか?ドル円39回の発表で「5分後の向き」が60分後に逆転した割合を検証

雇用統計の両建ては意味がある?

図6 雇用統計の前に両建てしたときの損益 同じ量の買いと売りを同時に持った場合 買い1万通貨 ドル円が上がれば 利益 → 売り1万通貨 ドル円が上がれば 同じだけ損 → 合計 損益はゼロのまま。 スプレッドは 2回ぶん払う

図: 雇用統計の前に両建てしたときの損益(hiro-fx.com作成)

両建ては、同じ通貨ペアで買いと売りを同じ量だけ持つことです。雇用統計でどちらに動いても損益は変わらないため、一見安全そうに見えます。しかし、損益がゼロで固定されるだけで、利益も出ません。そのうえスプレッドは買いと売りの2回ぶんかかり、持ち越せば買いと売りのスワップポイントの差も負担します。

知恵袋には、「発表直前に上下両方に仕掛け、外れたほうを切ればいい」という質問もあります。これは実質的に前の節の「上下に逆指値を置く」やり方と同じで、切ったほうの損が確定したあと、残したほうも逆に振られれば両方で損をします。往復の値動きが多い雇用統計では、起きやすい失敗です。

FX会社が両建てを勧めない理由

金融商品取引業等に関する内閣府令(第117条第1項第26号)は、FX会社が個人のお客さんに両建てを勧めることを禁止しています。条文では、持っている取引の損失を減らすための反対の取引の勧誘、と書かれています。個人が自分の判断で両建てすることは禁止されていませんが、FX会社のコラムでもコストがかさむ取引として説明されています(GMOクリック証券など)。

雇用統計の日にトレードしないなら、どう過ごす?

図7 雇用統計の日のチェックリスト その月の発表日(原則として第1金曜日)の朝に確認 ✓ 発表の時刻を確認する(夏時間は21:30、冬時間は22:30) ✓ 発表の前に、持っている取引を決済するか量を減らす ✓ 持ったままにするなら、損切りの逆指値を入れて証拠金に余裕を持たせる ✓ 金曜の夜なので、週明けまで持ち越すかどうかも決めておく ✓ 発表の直後は新しく取引しない。スプレッドが戻ったのを見てから考える ✓ チャートで値動きだけ見て、次の発表に備える 取引するかどうかは自分で判断する。過去の値動きは将来を約束しない

図: 雇用統計の日のチェックリスト(hiro-fx.com作成)

雇用統計の日は、まず発表の時刻を確かめましょう。持っている取引は、発表の前に決済するか、動いても耐えられる量まで減らしておくと安心です。持ったままにするなら、損切りの逆指値を入れたうえで、滑っても強制ロスカットにならないよう証拠金に余裕を持たせます。

発表は金曜日の夜なので、そのまま週末を越えると、週明けの月曜の朝に金曜の終わりと離れた価格から始まることもあります。取引しない時間は、チャートで値動きを眺めたり、結果と予想の差を確かめたりするのに使うと、次の発表で役に立ちます。当サイトの経済指標データベースでは、発表のたびにドル円の1分後・5分後・60分後の動きを自動で記録しています。

よくある質問

Q1. 雇用統計で稼いでいる人もいるのでは?

A. 発表の値動きで利益を出す人もいますが、同じ時間に損をしている人もいます。当サイトの計算では、初動に乗る・待ってから乗るといった単純なやり方は、売買コストを入れる前の時点で平均がほぼゼロかマイナスでした。

Q2. 雇用統計の発表は何時ですか?

A. 原則として毎月第1金曜日、日本時間の21:30(米国の夏時間)か22:30(冬時間)です。日程がずれる月もあるので、当サイトの経済指標カレンダーで確認してください。

Q3. 両建てしておけば強制ロスカットされませんか?

A. そうとは限りません。両建てに必要な証拠金の計算はFX会社によって違い、買いと売りの両方に証拠金が必要な会社もあります。スプレッドが広がると両方の取引の評価が悪くなり、証拠金維持率が下がることもあります。

Q4. 逆指値を入れておけば、損は決めた金額で止まりますか?

A. 止まらないことがあります。逆指値は「その価格に届いたら決済する」注文で、急な動きでは届いた時点の次の価格で成立するため、予定より損が大きくなることがあります。ただ、入れておかないと損がさらに膨らむおそれがあるので、入れておく意味はあります。

Q5. 雇用統計のほかに、トレードを避けたほうがいい時間は?

A. 米国の消費者物価指数(CPI)や、FOMC(米国の金利を決める会合)の結果発表の前後も、同じようにスプレッドが広がり大きく動きやすい時間です。日銀の金融政策決定会合の発表も、時刻が決まっていないぶん注意が必要です。

まとめ:雇用統計は「またがない・飛び乗らない」が基本

  • 初心者は、雇用統計の発表をまたいで持たず、直後にも取引しないのが無難
  • スプレッドは発表の瞬間にふだんの約6倍に広がり、4〜5分後に近い水準まで戻った(2026年の9回)
  • 発表1分後に初動に乗っても、1時間後の平均は−1.2pips(売買コスト抜き・128回)
  • 発表から1時間たっても、1分あたりの値動きは発表前の約1.7倍ある
  • 両建ては損益が固定されるだけでコストが増える。FX会社が勧めることは内閣府令で禁止されている

雇用統計でドル円が何pips動くのかは雇用統計でドル円は何pips動く?過去128回の値動きと予想の見方をご覧ください。

※この記事の情報は2026年10月1日時点のものです。値動きのデータは、米国労働省労働統計局(BLS)の公表日一覧(2016年1月〜2026年9月)と、Dukascopy社のヒストリカルデータ(ドル円の1分足・2026年分はティックデータ)をもとにhiro-fx.comが集計したものです。主な出典: 金融商品取引業等に関する内閣府令(e-Gov法令検索)、DMM FX「スプレッドが拡がる場合はありますか?」、みんなのFX「スプレッドについて」、SBI FXトレード「米国雇用統計」、GMOクリック証券「両建てとは」。過去の値動きは将来の値動きを約束するものではありません。この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、投資助言ではありません。取引はご自身の判断で行ってください。