※記事内に広告を含む場合があります
「日本の個人や機関投資家が外国株を買うから円安になる」。新NISAが始まった2024年以降、よく聞く説明です。ではドル円は、日本勢が外国株をたくさん買った週に本当に円安へ動いていたのでしょうか。このサイトのマネーフロー・データベースが蓄積している財務省の週次統計(2005年1月〜2026年8月29日)とドル円の週末終値を突き合わせ、2026年9月7日時点で数えました。
用語メモ:この記事の「外国株の買い越し額」は、財務省が毎週まとめている「日本の投資家が外国の株式を買った額から売った額を引いた数字」(億円・契約ベース)です。プラスが買い越し、マイナスが売り越しです。「その週のドル円」は前の週の金曜終値からその週の金曜終値までの変化(円)で、プラスが円安(ドル高)、マイナスが円高です。
・日本勢が外国株を多く買った週に、その週のドル円は円安に動いていたか(1,127週の集計)
・2026年に買い越しが上位10%に入った8週で、ドル円はどう動いたか
・補足として、4週間後まで見た場合と、年単位で見た場合の傾向
結論:「日本勢が外国株を買った週=円安」というデータは出てきませんでした
図1: 外国株の買い越し額でグループ分けした週の、その週にドル円が上昇した割合。2005年1月〜2026年8月・出典: マネーフロー・データベース、Yahoo Finance
ひとことで言うと:外国株を多く買った週も、普段の週も、ドル円が上がった割合はほぼ同じでした。
2005年1月から2026年8月までの1,127週のうち、買い越しが上位10%(3,417億円以上)だった週は114週あります。その週にドル円が上昇したのは55.3%でした。
普段の週(中間の80%)の上昇割合は52.6%です。差は3ポイントもなく、「買いが多い週は円安」とは言えない数字でした。
ドル円の平均の変化も、買いが多い週で+0.07円、普段の週で+0.06円と、ほとんど変わりません。買い越し額とその週のドル円の変化の相関(−1〜+1で連動の強さ)は+0.02で、ほぼゼロです。2021年以降の296週に絞っても−0.01でした。
検証の中身:2026年に外国株買いが上位10%に入った週のドル円を、1週ずつ見る
図2: ドル円の週末終値(上)と日本勢の外国株の買い越し額(下)。2025年1月4日〜2026年8月29日の87週・出典: マネーフロー・データベース、Yahoo Finance
ひとことで言うと:2026年に買い越しが上位10%に入った週は8回あり、その週にドル円が上がったのは6回でした。ただ、いちばん買いが多かった週は下落しています。
図2の橙の棒が、買い越しが上位10%に入った週です。2026年は1月から8月までに8週ありました。表1にその8週と、その週のドル円の変化を並べます。
| 週(土曜日まで) | 外国株の買い越し額 | その週のドル円 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 2026年1月31日 | +4,546億円 | +0.04円 | 1月末。ほぼ横ばい |
| 2026年2月21日 | +4,052億円 | +1.56円 | 1.56円の上昇 |
| 2026年3月14日 | +9,515億円 | +1.14円 | 9,515億円の買いで1.14円上昇 |
| 2026年4月4日 | +14,343億円 | −0.45円 | 1週で1.4兆円の買いでも下落 |
| 2026年6月20日 | +4,267億円 | +1.48円 | 6月の日銀利上げ後。上昇 |
| 2026年7月4日 | +8,266億円 | −0.34円 | 8,266億円の買いでも下落 |
| 2026年8月8日 | +9,274億円 | +0.31円 | 上昇は小幅 |
| 2026年8月15日 | +13,913億円 | +1.33円 | 1.4兆円の買いで1.33円上昇 |
表1: 2026年に外国株の買い越しが上位10%(3,417億円以上)に入った週と、その週のドル円の変化(前の週の金曜終値との差)。出典: マネーフロー・データベース・Yahoo Finance(2026年9月7日集計)
8週のうち上昇は6回で、割合だけ見ると多めです。ただ、2026年でいちばん買いが多かった4月4日の週(+14,343億円)は−0.45円と下落していて、買いの大きさと値動きの向きはそろっていません。
2005年からの全期間をグループごとにまとめると表2のとおりです。買い越しの週も売り越しの週も、上昇した割合は五分五分に近い数字でした。
| グループ | 回数 | その週のドル円の平均 | 上昇した週の割合 | ひとこと |
|---|---|---|---|---|
| 買い越し上位10%(3,417億円以上) | 114週 | +0.07円 | 55.3% | 普段の週と差がない |
| 買い越しの週すべて | 689週 | +0.10円 | 54.1% | 全体の平均とほぼ同じ |
| 中間の80% | 900週 | +0.06円 | 52.6% | 基準になる普段の週 |
| 売り越しの週すべて | 437週 | −0.03円 | 49.9% | ほぼ五分五分 |
| 売り越し上位10%(−2,391億円以下) | 113週 | −0.05円 | 48.7% | 大きく売った週もほぼ横ばい |
表2: 2005年1月〜2026年8月の1,127週を、外国株の買い越し額でグループ分けしたもの。出典: マネーフロー・データベース・Yahoo Finance(2026年9月7日集計)
補足:4週間後まで見ても、大きな偏りは見られませんでした
図3: 4週合計の外国株買い越しが上位10%(11,614億円以上)に入った24回について、起点の週から4週間後のドル円の変化(円)。2005年〜2026年・出典: マネーフロー・データベース、Yahoo Finance
ひとことで言うと:2026年8月末と同じ「4週合計が上位10%」の局面は過去に24回あり、4週後は上昇14回・下落10回でした。
ここからは時間軸を少し延ばして、4週間後のドル円を見ます。2026年8月29日までの4週間の買い越し合計は14,928億円で、2005年からの4週合計の分布では上位10%(11,614億円以上)に入っています。
図3は、この水準に入った過去24回の「その後4週間」です。上昇14回・下落10回で、平均は−0.23円でした。円安に偏ってはいません。
週ごとに見ても同じで、買い越し上位10%の週の4週間後は平均−0.25円・上昇47.3%でした。反対に、売り越し上位10%の週の4週間後は平均+0.92円・上昇66.1%と、やや円安寄りです。株が急落して日本勢が外国株を手放した局面のあと、円高が戻る動きが含まれているためと考えられます。
ちなみに、22年分を年ごとに並べると、外国株を多く買った年ほどドル円は下がっていました
図4: 各年の1月〜8月末までの外国株の買い越し合計(横軸・兆円)と、同じ期間のドル円の変化(縦軸・円)。2005年〜2026年の22年・出典: マネーフロー・データベース、Yahoo Finance
ひとことで言うと:年単位では「買うから円安」とは逆の並びでした。フローは円安の原因というより、相場の結果として出てくる面がありそうです。
図4で右下にあるのが2016年です。1〜8月に4.4兆円の買い越しがあった一方、ドル円は−18.31円と大きな円高でした。左上の2013年は5.0兆円の売り越しで、ドル円は+12.43円の円安です。22年の相関は−0.47でした。
日本の投資家は、株が下がって円高に振れた局面で外国株を買い増し、株高・円安の局面で利益を確定して売る動きが多いようです。2026年の1〜8月は1.9兆円の買い越しで、22年の中では8番目でした。
注意点もあります。この統計は大手の金融機関などの報告をまとめた速報値で、為替ヘッジ付きの買い(円売りを伴わない)も区別されていません。週の区切りは日曜から土曜、ドル円はニューヨーク時間の金曜終値なので、時間のずれも数時間あります。上位10%のような区切りは1,127週の中での相対的な位置で、金額そのものに意味があるわけではありません。
週ごとの買い越し額や4週合計、部門別の内訳はマネーフロー・データベースで毎日更新しています。投機筋の持ち高はIMMポジションウォッチ、金利差とドル円の連動は日米金利差ウォッチで確認できます。
執筆: 2026年9月7日時点。本記事は過去データの集計にもとづく情報提供であり、投資助言ではありません。売買の判断はご自身の責任でお願いします。
